企業への信頼感や愛着を持ち続けてもらうには、ブランド力を高める戦略を続けることが大切です。また、うまくブランド価値を高めて長期的に集客力や売上を維持するには、自社のブランド力を「資産」として捉える「ブランドエクイティ」という概念を知る必要があります。

しかし、「ブランドエクイティの概念がよく分からない」「どうすればブランドエクイティが高められるのだろう」と思う人も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、ブランドエクイティの概要や含まれる要素、ブランドエクイティを高めるメリットや高め方、ブランドエクイティを高めるのに成功した企業の事例について詳しく説明します。

そもそもブランドエクイティとは?

そもそもブランドエクイティとは、「自社ブランドが持つ資産価値」のことです。

資産というと保持している商品やサービス、人的リソースや資金といったものがイメージされがちですが、ブランドエクイティでは、企業が持つブランド力を資産として捉えます。

また、資産が将来的に利益をもたらすものとして保有されるように、ブランドエクイティも資産として企業に利益をもたらすものとして扱います。ブランドエクイティという概念を取り入れて事業運営するのであれば、「事業を継続させれば自然と高まっていくだろう」と考えるのではなく、積極的なマネジメントをおこなってブランドエクイティを高める必要があります。

ブランドエクイティに含まれる5つの要素

企業の資産のひとつであるブランドエクイティには、次の5つの要素が含まれています。

以下では、これらの要素について詳しく説明します。

ブランド認知

「ブランド認知」は、「どれだけ多くの顧客に企業のブランドが知られているか」を指します。同じ商品やサービスでも、まったく知らないブランドを利用するよりは知っているブランドを利用したほうが安心感があるため、購入や契約に結びつきやすくなります。

ブランド認知と聞くと、「企業名を知っている」「商品名を知っている」ということだと捉えられがちです。しかし、ブランドエクイティが高い状態になるには、「商品やサービスを利用することでどのような体験ができるか」「利用することでどのような価値を感じられるか」までイメージしてもらう必要があります。

たとえば、「ハンバーガー店といえば○○」だけでなく、「○○ではハンバーガーを安価に購入できるだけでなく、店内でゆったりとくつろぐこともできる」のように、ブランドの特長までイメージできる状態になると、「ブランドエクイティが高い企業」だといえます。

知覚品質

「知覚品質」とは、企業のブランドに対して顧客が抱いている品質のイメージです。

品質といえば、「企業が設定・保証している商品やサービスの質」だと思われがちですが、ここでは、あくまで「顧客が認識している品質」を指します。

たとえば掃除機のメーカーが「吸引力が他社製品よりも高い掃除機です」とアピールをしていても、顧客が「他社のほうが吸引力が高そうだ」とイメージしていれば、ブランドエクイティが低いことになります。

知覚品質を高めるには、品質についてアピールするだけでなく、信頼できる理由やサービス内容、店舗の雰囲気など、幅広い観点で魅力を伝えることが大切です。

ブランドロイヤルティ

「ブランドロイヤルティ」は、「顧客が企業や商品・サービスに対してどれくらい愛着を持っているか」を表します。ブランドロイヤルティが高いほど、継続して商品やサービスを利用してもらいやすくなるので、長期的な売上が期待できます。

たとえば飲食店の場合、「この店は何を頼んでも美味しいし、サービスも良い」と感じてもらえれば、顧客自身が店に対して好意的な気持ちを抱きます。すると、将来にわたって定期的に利用してくれるようになるだけでなく、知人にポジティブな口コミを広げてくれたりといった効果が期待できます。

ブランド連想

「ブランド連想」とは、「顧客がブランド名を聞いたときに連想するブランドイメージ」です。ブランド連想で好意的なイメージを強く抱いてもらえていれば、企業のブランドエクイティは高いといえます。

たとえば、自動車の場合、メーカー名を聞いただけで、「高級感がある」「乗り心地がよさそう」といったイメージを連想してもらえれるのであれば、ブランドエクイティが高いといえます。

ブランド連想を生み出すには、ユーザーに体験させる、広告でイメージを刷り込む、口コミをしてもらう、などの手法があります。ポジティブなブランド連想をしてもらえれば、競合ブランドと差別化することも可能です。

その他のブランド資産

「その他のブランド資産」は、形に残らないさまざまな資産が該当します。具体例として、次のものが挙げられます。

  • 特許
  • 著作権
  • 商標権
  • 知的財産
  • 独自の技術やノウハウ
  • 取引先や顧客との関係

たとえば、「ミドリムシを使った新たなエネルギー開発」のように、他社にない独自の技術を持っているケースが当てはまります。この場合、製造方法を他社が模倣するのは困難なため、ブランドエクイティは下がりにくいといえます。

ブランドエクイティを高めるメリットとは?

ここまでは、ブランドエクイティに含まれる要素について説明しました。ブランドエクイティを高めると、次の2つのメリットが生じます。

以下では、これらのメリットについて詳しく説明します。

市場で有利なポジションを確立できる

ブランドエクイティを高めると、競争の激しい市場でも有利なポジションを確立しやすくなります。

一般的に、競合が多い市場では価格競争に陥りやすいため、企業に利益が残りづらくなります。しかし、ブランドエクイティが高ければ、他社では手に入らない価値があると認識されるため、大きな値下げをすることなく集客数や売上を維持できるのです。

「○○市でパスタを食べるなら△△店」「肌に優しいシェーバーを買うなら○○社の商品」のように、ニーズの発生と同時に企業名や店名を思い出してもらえれば、広告宣伝に力を入れなくても業績を伸ばせるでしょう。

顧客の信頼や愛着を強めやすくなる

ブランドエクイティが高いと、顧客の信頼や愛着を強めやすくなります。信頼や愛着が強まると、「また○○店に行ってみよう」「今後○○社の商品を使い続けよう」と思ってもらえるので、長期的に売上を伸ばせます。

また、信頼や愛着が強まると、その顧客の口コミやレビュー、紹介によって新規顧客を増やせます。新規顧客が企業や店舗のファンになり、さらにリピーターが増えるという好循環が生まれれば、さらに集客数や売上が増えるでしょう。

ブランドエクイティの高め方とは?

目に見えない資産であるブランドエクイティは、どのように高めればよいのでしょうか。ブランドエクイティの高め方には、次の方法があります。

以下では、これらの方法について詳しく説明します。

ブランドのコンセプトを組織で共有する

ブランドエクイティを高めるには、まず組織内でブランドのコンセプトを共有し、意識を統一しなければなりません。

たとえば、企業の経営理念や将来の目標、価値観や行動指針を従業員に周知するなどの方法があります。商品やサービスごとに、コンセプトや解決したい顧客の課題を明確にすれば、ブランドイメージに一貫性を持たせられます。

ブランドの認知を拡大させる

組織内でブランドコンセプトを共有したら、次にブランドの認知を拡大させる手法を考えます。

以前はテレビCMやラジオCM、新聞広告や雑誌広告のような「マス広告」を活用するのが一般的でした。しかし、インターネットやスマートフォン、マーケティングツールをうまく活用すればターゲットとする顧客に絞ってブランドを認知させられます。

たとえば、「10~20代の女性に自社のファッションブランドを広めたいからInstagram広告を活用する」「キャンプ用品の使い勝手が伝わるよう、YouTubeで動画広告を配信する」といった戦略が考えられます。必要に応じてインフルエンサーを活用すれば、幅広い顧客に企業のブランドを知ってもらえるでしょう。

企業のファンを増やす

ブランドの認知が拡大すると、徐々に企業の商品やサービスに興味を持ち、利用してくれる顧客が増えてきます。商品やサービスの利用を通してファンを増やすには、試食や体験会、お試し入会など、実際に体験してもらうのがおすすめです。

また、顧客管理ツールなどを活用して、商品の活用方法に関するメールや関連商品が掲載されたメールを自動的に送信したり、会員限定のイベントを開催したりすることも、企業のファンを増やすことにつながります。

継続して施策に取り組む

ここまで紹介したブランドエクイティを高める施策を実施しても、時間が経過するにつれて効果は徐々に薄れてきます。ブランドエクイティが高い状態を維持するには、これらの施策を継続的に実施することが大切です。

とくに事業規模を拡大させる際はブランドエクイティが低下しやすいので注意が必要です。もし、地域に1つしかなかった飲食店を全国に展開すると、「どこでも食べれる味だ」というイメージが広がり、地元のファンが離れてしまうかもしれません。経営方針を変更する際は、ブランドエクイティに与える影響を慎重に考える必要があります。

ブランドエクイティの構築に成功した企業の事例

ブランドエクイティについて理解を深めるには、実際にブランドエクイティを構築した企業の成功事例を知ることが大切です。

以下では、3つの成功事例を紹介します。

コーヒーチェーン店の事例

世界でも有名なコーヒーチェーン店の事例です。この企業では、コーヒーの品質にこだわるだけでなく、顧客にとって居心地のよい空間づくりを意識することで、ブランドエクイティを高めています。

また、店舗を全国展開することでブランド認知を拡大させるとともに、全店を自社直営店にしたのも特長です。接客やサービスの品質を統一し、コーヒーの楽しみ方を顧客に積極的に伝えることで、「どこの店舗に行っても間違いのないサービスを受けられる」という印象を顧客に与えました。

このように、「居心地のよい空間でゆったりと高品質なコーヒーを味わえる」というイメージを定着させられたことから、多くの顧客に選ばれる企業へと成長しています。

参考:スターバックスのようなブランドは どうしたら生み出せるのか? | ブランディング ナレッジベースSINCE.

生活雑貨メーカーの事例

生活雑貨市場では、機能性や利便性、価格や素材などを追求し、市場でのシェア争いが激化しています。しかし、国内のある生活雑貨メーカーでは、シンプルかつナチュラルなブランドイメージでさまざまな商品を販売したことから、競争の激しい市場で多くのファンを獲得しています。

また、ブランドエクイティを高めたことで「このメーカーの製品で身の回り品を統一させたい」と思ってもらえたのも特長です。顧客1人が多くの関連商品を購入するので、それだけ売上が伸びやすくなっています。

参考;無印良品の「これでいい」ブランドコンセプト

リゾート運営会社の事例

ホテルや旅館など、宿泊施設を運営する企業は多いですが、ある国内のリゾート運営会社は、「他社では味わえない非日常を体感できる」というイメージを広めることでブランドエクイティを高めています。

具体例として、「客室にテレビや時計を置かない」「質が高くきめ細かいサービスを提供する」といったことが挙げられます。普段味わえない特別な体験に感動した顧客は企業のファンになり、リピート利用へとつながっています。

参考:星野リゾートのブランディングから学ぶ!〜理論の実践とは〜

まとめ

ここでは、ブランドエクイティの概要やメリット、ブランドエクイティを高める方法や他社の成功事例を説明しました。

多様化する市場で独自の立ち位置を確立するのは簡単ではありませんが、他社では満たせない顧客のニーズを開拓するとともに、継続的なブランド戦略を続ければ、市場でのシェアをさらに拡大させることも可能です。ここで説明した内容を参考にして、企業のブランドエクイティを高めましょう。

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