商品・サービスの宣伝や顧客獲得など、効果的な販促ツールの一つとして多くの企業や店舗が活用しているツールがメールマガジン(以下、メルマガ)です。しかし、メルマガを配信するだけで満足し、一つのメルマガでどのくらいの反響を得られたかという効果測定を行っていないケースが少なくありません。メルマガは効果測定を適切に行うことで、売上アップや顧客獲得などのより一層の効果を得られます。
そこで今回は、なぜメルマガにおいて効果測定が重要なのかを解説し、効果測定を行う際の評価の指標や計算式、効果測定を行うためのツールなどを詳しく説明していきます。
目次
メルマガの効果測定が重要な理由
メルマガは「配信すれば完了」と考え、その後は特に対策は行っていない人も多いのではないでしょうか。まずは、なぜメルマガに効果測定が重要なのかを説明します。
メルマガの効果を数値で把握できる
メルマガの効果測定を行うことで、メルマガがどのくらい開封されたか、紹介しているURLを何回クリックされたか、などを数値化して詳しく把握することができます。それにより、どのメルマガの内容が多くの人の反響を得られたか、どの商品・サービスが購入までつながったかといったような、自店の商品・サービスと顧客のニーズとのマッチングを詳しく把握することができるのです。
また、メルマガは配信を目的とするのではなく、顧客との接点維持や新商品の販促など具体的な目的設定が必要です。その目的に対してどこまで到達できているかを把握するために、効果測定は重要な役割を果たします。
改善点を見つけることができる
メルマガの効果を数値で把握できることで、ユーザーがメルマガを読んでからどのような行動を起こしたかがわかりやすくなります。さらにメルマガそのものだけでなく、メルマガから遷移する自社サイトに対する反響や商品・サービスの購入率なども知ることも可能です。
ユーザーの行動を細かく数値化して分析することで、メルマガの中で修正が必要な部分を明確にできます。そうして改善を繰り返していくことでより高い効果を得られるメルマガ配信を続けていくことができるのです。
メルマガの効果測定の指標
メルマガの効果測定において、評価の指標となるものには以下のようなものがあります。
- メール到達率・配信成功率
- エラー率・エラーメール率
- メール開封率
- CTR(クリック率)
- CVR(コンバージョン率)
- 配信停止・解約(オプトアウト)率
- メルマガのROI(投資対効果)
これらを細かく数値化して分析していくことで、精度の高い効果測定を図ることができます。最初から全て把握しようとハードルを上げずに、これらの概念を頭に入れておくだけでもメルマガ配信に対する考え方も変わってくるでしょう。それぞれの指標について説明していきます。
メール到達率・配信成功率
メール到達率とは、メルマガがユーザーの受信ボックスに正しく届いた割合を指します。配信成功率と呼ばれることもあります。メール到達率・配信成功率の計算方法は下記の通りです。
- メール到達率・配信成功率=配信成功数÷配信数×100
メール到達率・配信成功率の平均値は98%〜99%とされていますが、他の指標もあわせて、より精度の高い効果測定をするためには100%を目指すことが理想です。
エラー率・エラーメール率
エラー率・エラーメール率とは、配信したメルマガが何らかの理由から正しく届かなかった「配信エラー」の割合を指します。エラー率・エラーメール率の平均は1.5%〜2%とされています。
エラー率・エラーメール率を把握しておくことで、存在していないメールアドレスを整理でき、メルマガ登録者の管理がしやすくなるというメリットがあります。
配信エラーが起こる原因としては主に下記があげられます。
- ユーザーのメールアドレスの変更
- 受信ボックスの容量超過
- 職場のパソコンでの購読で、退職などによりメールアドレスが削除された
ほかにも、配信したメルマガが迷惑メールやなりすましと認識されて迷惑メールボックスに配信されたり、間違ったメールアドレスが登録されていたために正しく配信されなかったりするケースも考えられます。
迷惑メールボックスに配信されてしまう背景には、送信元のIPアドレスが信頼できるものかを判定する「IPレピュテーション」が関係しているとも考えられます。IPレピュテーションとは「IPアドレスに対する評判」を指します。
送信元が過去に迷惑メールを配信していたり、ユーザーから迷惑メールだと報告されたりすることが続くとIPレピュテーションのスコアが低くなり、結果としてインターネットサービスプロバイダーが「このメルマガは疑わしい」と評価をし、迷惑メールとして振り分けられてしまうことがあります。
迷惑メールだと判断されないためには、メルマガの内容の精査や、存在しないメールアドレスに配信し続けないことなど、スコアが下がらないように対策をしましょう。
メール開封率
メール開封率とは、メルマガの送信数に対してユーザーが実際に開封した割合を指します。メルマガの開封率は10〜20%が目安とされています。 メール開封率の計算方法は下記の通りです。
- メール開封率=開封数÷配信成功数×100
しかしメール開封率の測定は、HTMLメールが形成されているHTMLの中に特定のタグを挿入することで計測することができるため、HTMLで記述されていないテキストメールでは計測することはできず、実際の開封率の平均はこの限りではありません。
メール開封率は受信メールボックスの一覧を見たときに、どれだけユーザーの目を引きつけることができるかが重要となります。メールの件名や送信者名を迷惑メールだと誤解されないようにしたり、ユーザーが「開封したい」と思える件名にしたりする工夫が必要です。
メルマガの開封率について詳しくは、下記の記事もあわせてお読みください。
CTR(クリック率)
CTR(クリック率)とは、メルマガの本文で紹介しているURLのリンクをユーザーがクリックした割合を指します。クリックスルー率と呼ばれることもあります。CTRの平均は1%〜2%(メール開封率の10分の1程度)とされており、計算式は下記の通りです。
- CTR(クリック率)=クリック数÷配信成功数×100
CTRを測る具体的な方法としては、メルマガの本文の中に、商品・サービスの購入や会員登録など、最終的に遷移してもらいたいURLを複数記載しておき、クリック数を計測します。CTRを把握することは、複数のURLの中で、ユーザーがどの内容に興味・関心を抱いてクリックしたかがわかり、比較検討や改善に役立ちます。
CVR(コンバージョン率)
CVR(コンバージョン率)とは、ユーザーがメルマガから目的のウェブページへ遷移してから、商品・サービスの購入や会員登録、お問い合わせといった最終目的が実行された割合を指します。CVRの平均は、0.1~0.2%(クリック率の10分の1程度)で、計算方法は下記の通りです。
- CVR(コンバージョン率)=成果(最終目的の実行数)÷クリック数×100
一つのメルマガの目的が実行されたということは、そのメルマガがユーザーのニーズと合致したメルマガであるということです。反対に、CVRが上がらないということは、メルマガの内容や商品・サービスに魅力が感じられないか、遷移先のウェブページがわかりにくいなどといった問題が考えられるでしょう。
配信停止・解約(オプトアウト)率
配信停止・解約率とは、メルマガ購読を解除した割合のことです。購読解除率と呼ばれることもあります。配信停止・解約率の計算式は下記の通りです。
- 配信停止・解約率=購読解除数÷配信成功数×100
配信停止・解約の原因として考えられるのは、メルマガの内容が期待していたものと違っていたり、メルマガが正常に表示されず読めなかったりしたことが挙げられます。
メルマガを配信する際は特定電子メール法により、配信停止・解約の方法を必ず記載する義務があります。メルマガ配信停止・解約率は平均して0.25%と高いものではないですが、解約理由のアンケートをお願いするなどで、対策を取ることも有効でしょう。
メルマガのROI(投資対効果)
メルマガの投資対効果とは、メルマガ配信までにかけたコストでどれだけの利益を上げたかという指標です。メルマガ配信でのコストには、配信サービスの利用額やユーザー登録リストの作成費、メルマガを運用する人件費などがあげられます。
算出するには「((売上-売上原価)-投資コスト)÷投資コスト×100(%)」という式で割り出すことができます。「(売上-売上原価)-投資コスト」から出た数字は、簡潔に言えば「利益」を表します。つまり、利益よりもコストのほうがかかっていれば、投資対効果としては赤字であるということがわかります。
メルマガの効果測定で使用できるツール
メルマガの効果測定では、適したツールや分析方法によって正確な測定を行うことが大切です。ここでは、メルマガの効果測定で使用できるツールについて3つ紹介します。
- Googleアナリティクス(GA4)
- メール配信システム・メルマガ配信システム
- マーケティングオートメーションツール(MA)
Googleアナリティクス(GA4)
Googleアナリティクスは、Googleが無料で提供しているアクセス解析ツールで、現GA4(Googleアナリティクス4)と呼ばれています。メルマガの場合、HTMLメール内に「Measurement Protocol」のURLを埋め込むことで、メール開封率をはじめ、CTR(クリック率)やCVR(コンバージョン率)、クリック数やクリック先での直帰率など、GA4を用いたさまざまな効果測定が可能です。
メール配信システム・メルマガ配信システム
メール配信システムは、ユーザーのメールアドレスの登録・管理からメールの作成や配信まで行えることはもちろん、自動集計や分析によって効果測定も行うことができるツールです。ツールによって、ユーザーの属性や行動履歴にあわせて異なるメール送信が可能なシステムや、メール開封率やCTRなどの指標をランキング形式で表示するシステムなど、メールマーケティング初心者にも導入しやすい機能があります。
マーケティングオートメーションツール(MA)
マーケティングオートメーションツール(MA)とは、マーケティング業務全般の効率化のために使われているツールで、内容次第ではメール配信システムよりも高度で正確な施策を図ることができます。
たとえば、ユーザー情報の属性や行動をデータ化することによってターゲットを分類してリスト化することで、見込み顧客との関係を強化する施策につなげられます。他にも、継続的に配信エラーが続いているメールアドレスを配信リストから除外したりする機能などもあります。これらを活用することで、メルマガの配信成功率や到着率の向上が期待できます。
メルマガの効果測定は継続することが大切
メルマガの運用には、「Plan(計画)」「Do(実行)」「Check(評価)」「Action(改善)」のPDCAを回して定着させることが重要とされています。つまり、メール開封率やCTR(クリック率)などひとつひとつの指標の効果測定と配信を繰り返し効果や精度をあげていく必要があるということです。
たとえば、CTR(クリック率)の改善を図るには、実際に配信しているメルマガがユーザーの本来のニーズとあっているのか、記載しているリンクの配置が正しい位置なのかなどを見直す必要もあるでしょう。効果測定で浮き彫りになった数字を見ながら、その裏にある課題を見つけて解決や改善に取り組むことで、よりユーザーニーズに合致したメルマガへとアップグレードしていくことができます。
さらに、メルマガから遷移した先のサイト会員登録や商品・サービスの購入などのアクションにも目を向けることで、メルマガをきっかけにより広い範囲での課題の発見にもつなげられます。
なお、メルマガの運用や改善は中長期的な取り組みになります。先に紹介したツールの活用や運用の仕組みを構築することが大切になるので、必要な準備や体制を整えましょう。
まとめ
今回は、メルマガ配信における効果測定の重要性を説明しました。メルマガとは伝えたいことを配信すれば終わりと考えてしまいがちですが、どうすればユーザーが開封してくれるか、最後まで読んでくれるかということへの具体的な対策が必要です。そのユーザーのアクションを細かく把握するために必要なのが効果測定となります。
効果測定の評価の指標には、開封率、クリック率、配信停止・解約率などがあります。それぞれの数値を明確にすることで、自店のメルマガの何に問題があり、目的とする商品・サービスの購入や会員登録に誘導するにはどのような改善が必要かというのが具体的に把握できます。
まずは効果測定とはどのようなものであるかを頭に入れるだけでも、次からのメルマガ配信の考え方も違ってくるはずです。効果的なメルマガ配信で目的達成に役立ててみてはいかがでしょうか。
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