飲食店が利益を得るためには、販売価格を上げるだけではなく、原価率をできるだけ抑えて、利益を出やすくすることが重要です。原価率を抑えるためには、仕入れ価格を下げる以外に、仕入れ後の食材の取り扱いにも注意が必要になります。今回は、飲食店における原価率について、その適正な比率や計算方法、原価率を抑えるためのコツについて解説します。

飲食店における「原価率」とは?

飲食店での原価率とはどのような計算で求められるのでしょうか。ここでは、飲食店における原価率についてを解説します。

売上に対して原価が占める割合のこと

原価率とは、店舗における販売価格のなかの売上原価のことを指し、原材料費がそれにあたります。飲食店での原材料費とは食材費にあたることから、食材比率、フードコストといわれることもあります。そのため、原価率を抑えられることで利益が出やすくなると考えられます。

原価率が重要な数字である理由

先に示したように原価率を抑えることで利益につながりやすいことから、飲食店においての原価率は重要な数値といえます。売上高を多く得られたとしても、原価率が高すぎると利益が上がらず、経営に影響を与えることにつながります。ただし、利益を多く得るために原価率を抑えすぎると、料理そのものの質の低下、さらに顧客満足度の低下にもつながりかねません。そのため、原価率が高くなりそうなメニューの場合には極力販売価格を抑えながら、原価率の低いドリンクなどとセットで提供することで利益を上げるという方法もあります。

飲食店の場合、基本的には食材ロスを減らすことで食材のコストを抑え、それにより利益を上げることが大事であり、原価率の把握は重要なポイントとなります。

原価率の計算方法

原価率の計算方法は下記のとおりです。

  • 原価率(%)=原価金額(円)÷販売価格(円)×100

1,000円のパスタセットの原価金額が250円という場合、250÷1000×100となり、原価率は25%となります。ただしこの場合、原価金額をどのように算出するかも重要であり、食材ロスがどの程度発生したかという食材ロス率や、材料の総量から不可食部位をのぞいた可食部の割合を示す歩留まり(ぶどまり)率についても考慮する必要があります。食材ロス率や歩留まり率については次に解説します。

原価率にはロス率も関係している

飲食店の場合、用意した食材が仕入れミスや廃棄など何かの理由で使用できなくなることがあります。それが食材ロス率であり、原価率を考える際はその比率も含めて計算しなければなりません。食材ロス率の計算は下記のとおりです。

  • 食材ロス率(%)=ロス金額(円)÷売上高(円)×100

食材ロスは当然極力低いほうが利益につながりますが、それが0%ということになると、提供できる食材がなくなってしまったり、鮮度の低い食材を提供したりしたことでクレームにつながるなどの悪影響も考えられるます。そのため、食材ロスは高すぎず、でも低すぎない程度に適切な管理が必要です。

歩留まり率の把握も重要

飲食店における歩留まりとは、材料の総量に対する可食部の割合を指したものです。たとえば魚1尾の中でも、内臓や骨、うろこなど、料理に使えない部位もあります。その不可食部のところを取り除いて残った可食部の量が、魚1尾の総量に対する歩留まりといいます。歩留まり率の計算方法は下記のとおりです。

  • 歩留まり率(%)=可食部量(g)÷原材料総量(g)×100

また、材料に捨てる部分が出た場合は、原価を再計算する必要があります。そのことを歩留まり後原価といい、次の式で求めることができます。

  • 歩留まり後原価=調理・加工前の原価÷歩留まり率

ここまで厳密に計算することで、飲食店における利益はより正確に算出することができます。

原価率はどのくらいが適正なのか?

原価率は食品ロス率や歩留まり率も関係していることがわかりましたが、実際にどの程度の割合が飲食店では適正といえるのでしょうか。適正な原価率について詳しく解説していきます。

飲食店の原価率は30%が目安とされている

飲食店では、人件費や光熱費といった経費とのバランスを考えると、原価率は30%が目安であるとされています。つまり、原価率が30%で、人件費が30%、光熱費などのその他の経費が30%だとすると、残りの10%が利益となります。

ただし、飲食店の業態によっても必要な材料も原価率も異なります。全てのメニューの原価率が30%以下であることが適切であるというわけではなく、材料ごとの原価率を出したあとの平均値が30%以下であることが好ましいといえるでしょう。

主な業種ごとの原価率

先に示したように、飲食店といっても業種によって原価率が20%台~30%台と差があります。自身の飲食店がどの業態にあたり、どの程度の原価率であるのか、あらかじめ調べて、より高い利益を得られるように進めてみるとよいでしょう。

主な業種ごとの原価率は、表の通りです。

業種 原価率の目安
ラーメン店 35%
喫茶店 25%
居酒屋 38%
レストラン 38%

原価率の考え方・コツ・ポイント

原価率についてより詳しく把握するためには、考え方のコツを理解する必要があります。ここでは原価率を考える際のポイントについて解説します。

原価率の考え方・コツ・ポイント
  • FL比率で考える
  • メニュー全体でバランスを取る
  • 粗利額も確認する

FL比率で考える

「FL比率」とは、「Food」のFと「Lavor」のLをあわせたものであり、売上高に占める原材料費と人件費の割合を指します。人件費が安ければ原材料費の割合を増やすことができ、目安としてはFL比率は55〜60%が目標数値とされています。

FL比率について詳しくは、以下の記事もあわせてお読みください。

飲食店経営で大切なFLコスト・比率を解説|人件費・食材費のコントロール方法は?

メニュー全体でバランスを取る

メニューの価格を設定する場合、単品で考えるのではなく、メニュー全体のバランスをみて考える必要があります。利益を確保するには原価率が低く利益率が高くなるようなメニューをつくり、メインメニューには原価率が高いために利益率は上がらないものの集客を確保できるメニューにする、という考え方です。原価率の高低によって仕入れ方法を検討したり、調理技術を高めたりすることで原価率を下げる工夫をし、原価率の高いメニューが多く注文される場合にはメニューを見直すなどで全体的なバランスを考えましょう。

粗利額も確認する

原価率について検討する際には、原価率だけでなく粗利額も確認する必要があります。飲食店における粗利額とは、メニューの販売価格に対して原材料費がどれくらいかかっているかを示したもので、原材料費を販売価格で割ったもので計算できます。

たとえば、メインメニューである黒毛和牛ハンバーグが販売価格1,500円で原価が900円だとすると、原価率は60%であり、サイドメニューのベイクドポテトが販売価格450円に対し 原価が90円だとすると原価率は20%です。ハンバーグの粗利は600円ですが、ベイクドポテトは360円の粗利であり、ひと皿の注文で倍近くの差が生じることになります。調理の手間にも差が出るものの、どれだけの利益をあげられるかということには粗利額の理解も重要です。

利益率について詳しくは、以下の記事もあわせてお読みください。

飲食店経営は儲かる?目指すべき利益率を解説

原価率を抑える具体的な方法

利益を上げるためにはやはり原価率をどのように抑えるかというのは重要なカギとなるでしょう。最後に、原価率を抑える具体的な方法について6つ紹介します。

原価率を抑える具体的な方法
  • 仕入れ価格を抑える
  • 食材の廃棄やロスを減らす
  • 使用する食材の分量を守る
  • 販売価格を調整する
  • 利益率の高いメニューを作る
  • 在庫管理を徹底する

仕入れ価格を抑える

原価率を抑えるためには仕入れ価格を抑えることが重要です。仕入れ価格は常に定額である必要はなく、値下げ交渉を行うことも仕入れ価格を抑えるためには大切なプロセスといえます。もし自身の店舗が開業後少しずつ上昇気流に乗り、仕入れを増やしてもいいと考えた場合には値下げ交渉を行うタイミングでもあります。

また、仕入れ先を変更したり、複数の業者に相談したりしてもよいでしょう。また、飲食店における原材料は、その年の収穫や成育によっても原材料費が変動します。その場合でも大幅に価格が高騰しないように、仕入れ先業者と信頼関係を築いておくことも重要でしょう。

適切な仕入れ業者の選び方について詳しくは、以下の記事もあわせてお読みください。

飲食店に適当な食材の仕入れ業者とは|仕入れる業者の種類や選び方を解説

食材の廃棄やロスを減らす

冒頭にも示したように、原価率には食材ロス率も大きく関係してきます。単純に廃棄する原材料や食材の量が減れば、原価率は下がることになります。原材料の無駄をなくすことだけでなく、ひとつのメニューに用いる食材の量や種類を減らしてみるなど、なぜ食材ロス率が高くなっているのかを検証してみることもポイントです。

使用する食材の分量を守る

食材ロス以外にも、実際にメニューで使用する食材の定量を必ず守るということも原価率を下げるためのポイントです。食材だけでなく調味料ひとつでも、メニューごとにしっかりと定量を決めておきましょう。慣れているからといって感覚に頼ってしまうと、食材の分量が増えるだけでなく、調味料が多くなれば味そのものが変わり、安定したメニューの提供ができなくなってしまいます。

販売価格を調整する

原価率の高いメニューが多く注文されてしまうと、全体的な原価率が上昇してしまい、利益につながらなくなります。あまりに原価率の上昇が続く場合には、メニュー全体の見直しや販売価格の調整を行いましょう。

ただし、飲食店の場合、季節ごとの天候などによって食材の仕入れ価格に変動がおきる場合があります。あくまで一時的な仕入れ価格の高騰であれば影響は小さいかもしれませんが、価格が元に戻らない、むしろ価格が上昇し続けている、といった場合には販売価格を上げることも検討する必要があるでしょう。

利益率の高いメニューを作る

利益率が高いうえに、顧客も満足してくれるようなメニューの開発も利益を出すには重要なポイントとなります。また、ドリンクやサイドメニューなど原価率の低いメニューを組み合わせてセットメニューとして提供することでも利益率アップを期待できます。セットメニューで客単価アップと利益率のアップを同時に目指してみるのもよいでしょう。

メニュー開発について詳しくは、以下の記事もあわせてお読みください。

メニュー開発の手順|メニュー開発の手順や重要なポイント

在庫管理を徹底する

原価率と関係性のある食品ロス率を抑えるためには、在庫管理の徹底が重要です。こまめに棚卸しを行うなど、細かい在庫管理によって、今どのくらいの食材を在庫しているかを把握しておきましょう。また、食品廃棄を避けるためには、食材を使用する際に冷蔵庫の先入れ先出しを徹底して古いものから順に取り出すようにし、注文を聞き間違えるなどのオペレーションミスが起きないように、スタッフへの教育も重点的に行うことも原価率を抑えることにつながるでしょう。

在庫管理について詳しくは、以下の記事もあわせてお読みください。

飲食店における在庫管理|在庫管理の手順やポイントをわかりやすく解説

まとめ

今回は、飲食店における原価率について解説しました。飲食店の場合、食材ロス率の軽減や材料の可食部の割合を示す歩留まり率など、食材や仕入れ価格を意識することが重要です。また、原価率の低いメニューと高いメニューの提供の仕方によって、客単価だけでなく粗利額もアップすることができます。仕入れ価格の変動にも対応できるように仕入れ業者との関係性も保ちながら飲食店の経営を行いましょう。

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