業種やターゲットとする市場によって、立案すべきマーケティング戦略は異なります。しかし、適切なマーケティング戦略を考えるためには、ほかの企業がどのようなマーケティングをおこなっているか知っておくことも大切です。

ここでは、実際にマーケティングで成功した企業の事例を紹介したうえで、マーケティング戦略を立案する手順について解説します。また、マーケティング戦略を立案するうえで大切なことについても説明します。

マーケティング戦略とは?


そもそもマーケティング戦略とは、企業が自社の商品やサービスを市場に提供するうえで、ニーズや自社の状況などをもとに、ターゲットや価値、価格、提供方法などを策定していくことを指します。

商品やサービスがさまざまな企業からあらゆる形で提供されている現代では、消費者のニーズも多種多様です。企業はそれらのニーズや市場の動き、消費者行動などを調査・分析し、自社の商品・サービスを売り込むために最適な手法を見出す必要があります。

成功事例や細かな分析によって、まずは自社に合ったマーケティング戦略を立てられるようにすることが大切です。

マーケティング戦略の成功事例を紹介

まずは、企業がどのようにマーケティングを成功させているのかを把握することで、おこなうべき戦略が考えやすくなります。ここでは最初に、マーケティング戦略の成功事例をいくつかご紹介します。

フォトスタジオの事例

今では多くの消費者になじみのある行事となっている「生後100日記念日」や「入園式の記念撮影」。この考え方をつくり上げたフォトスタジオの事例を紹介します。

現在のフォトスタジオは誰でも気軽に写真撮影がおこなえる店舗というイメージですが、以前は少々敷居の高い「写真館」という存在でしかありませんでした。しかし、1992年に「こども写真館」を始めて、子どもを持つ家族をターゲットにしたマーケティングを積極的におこなうことによって、「子どもの記念日に家族で美しい写真を残したい」という消費者のニーズを満たすことに成功したのです。

少子化が深刻化する時代の中でも売上を伸ばし、世界にまでシェアを拡大していることから、マーケティング戦略に成功した代表的な事例だといえます。

カテキン入り飲料の事例

既存企業のシェアが大きい飲料業界で、カテキン含有量が多い健康をサポートするお茶の販売で新規参入し、成功した企業の事例を紹介します。ターゲットとして設定したのは、生活習慣病や肥満などに悩みを抱える男性で、「体型を改善して病気の発症を予防したい」と考える消費者のニーズを満たすことで成果を出したのが特徴です。

また、一般的に飲みにくいとされる「カテキン含有飲料」を飲みやすく改良したり、厚生労働省から脂肪燃焼効果のある「特定保健用食品」の認定を受けたりしたことも、マーケティング戦略が成功した理由として挙げられます。価格を高めに設定して競合との価格競争を避けたことも、市場での立ち位置を確立することにつながったといえるでしょう。

家具・生活雑貨メーカーの事例

国内で大手の家具・生活雑貨メーカーでは、消費者のニーズを反映してつくった製品を手ごろな価格で販売したことから、売上アップに成功しています。

企画やデザイン、製造から販売までの一連の流れを企業内で完結させることによって、コストを抑えています。値段が安くても品質を落とすことなく商品を提供し、リピート顧客やファンを増やしたことで、市場で独自の立ち位置を確立した代表的な成功事例だといえます。

また、郊外型の大型店舗が多いという特徴を活かして、ショールームを用意してトータルコーディネートの例を示す手法も、この企業ならではのマーケティング手法です。まとめ買いを促すことで顧客1人あたりの売上を高める仕組みが整備されているため、効率的に利益を出せるようになっています。

パーソナルトレーニング企業の事例

理想の体型を手に入れるためにコミットするとして有名な、パーソナルトレーニング業界大手の企業事例を紹介します。

筋力アップや心肺機能の向上など、トレーニングの目的はさまざまですが、この企業は「ダイエット」に絞って他社と差別化を図っているのが特徴です。CMや広告では、トレーニング前後の体型の変化を前面に押し出し、視覚的なインパクトを与えています。

また、「ダイエットを成功させる」という結果にコミットすることで価格設定を他社より高めに設定しているのも戦略のひとつです。ターゲット、価格、消費者に与える価値、販売促進といった幅広い面でうまくマーケティング戦略が立てられているため、企業を成長させられたと考えられます。

ファストファッションブランドの事例

世界中に店舗を展開しているファストファッションブランドH社は、高級ブランドに類似した商品を低価格で提供することで、「ブランド品を手に入れたくても手が届かない」という消費者層の囲い込みに成功しています。

商品を低価格で提供できている理由として、企業独自でファッションアイテムを製造して、コストを抑えた事業運営をしていることが挙げられます。また、商品の製造をコストの安い海外の工場でおこなっていることや、商品の出荷を輸送費の安い海輸にしていることも、安価に商品を提供できる理由です。

近年、価格競争が厳しくなってきていますが、このようにマーケティング戦略で他社より有利な仕組みを確立すれば、市場でうまく売上を伸ばせるようになると期待できます。

マーケティング戦略を立案する手順とは?

適切なマーケティング戦略を立案するためには、基本的な手順を理解しておく必要があります。具体的な手順は、次の4つです。

マーケティング戦略を立案する手順
  1. マーケティングをおこなう対象を明確にする
  2. 消費者が得られる利益を明確にする
  3. 競合との差別化を図る
  4. 実行した後の効果検証と改善点の洗い出し

このような手順に基づいてマーケティング戦略を考えれば、市場のニーズを汲み取りながら有利に事業を展開できるようになるでしょう。以下では、マーケティング戦略を立案する手順について詳しく説明します。

マーケティングをおこなう対象を明確にする

マーケティング戦略を立案する際は、まずマーケティングをおこなう対象を明確にすることが一般的です。それは、マーケティングをおこなう対象を明確にすることで、ほかのターゲット以外の消費者にアプローチするコストを削減できるからです。

具体例として、市場を年齢や性別、職業や趣味・価値観といった項目ごとに分類し、どのターゲットに焦点を当てて商品やサービスを販売すべきかどうかを決めていく方法が挙げられます。近年、消費者のニーズが多様化していることを踏まえると、市場を分類する際はなるべく細かくグループ分けすると、ターゲットを絞りやすくなるでしょう。

ターゲットとする消費者を限定しすぎてしまうと、「売上が伸びないのではないか」という心配が出てくるかもしれません。しかし、消費者1人ひとりの細かいニーズを満たせると、結果的に企業のブランド力を高めたりリピーターの獲得につながったりすることが期待できます。中長期的に企業に与えるメリットは大きくなると考えられるため、なるべく詳細にターゲットを絞り込みましょう。

消費者が得られる利益を明確にする

マーケティングをおこなう対象を明確にしたら、次は消費者が得られる利益を明確にしていきます。企業が提供する商品やサービスを手に入れると、消費者にとってどのようなメリットが生じるのかをはっきりさせておけば、消費者に魅力を感じてもらいやすくなります。

実際に商品やサービスの魅力をアピールする際は、キャッチコピーを用いるなど企業のコンセプトが端的に伝わるよう心がけましょう。現代はさまざまな情報であふれかえっているため、短期間で消費者に商品やサービスを印象づけることが重要です。

また、消費者にとっての利益には「現在抱えている問題がその商品やサービスによって解決・改善されること」も含まれます。何か新しいことを得られるという観点だけでなく、消費者の悩み解決に繋げられるかという点についても着目してみるとよいでしょう。

競合との差別化を図る

どれだけ魅力的な商品やサービスを開発したとしても、すでに競合他社が消費者のニーズを満たす事業を展開していると、十分に売上を伸ばせないかもしれません。同じ市場で成果を出し続けるためには、競合との差別化を考えることが大切です。

競合がいない市場で事業を展開するのが理想的ですが、モノや情報であふれかえっている現代では、競合企業は一定数存在すると考えられます。そのため、市場の分析や消費者が得られる利益を考えつつ、競合がどのような商品やサービスを、どのような手法で販売しているかもあわせて調査しておきましょう。競合他社の状況を調査したうえで企業の魅力をアピールできれば、市場において有利なポジションを確立しやすくなります。

実行した後の効果検証と改善点の洗い出し

戦略が立案でき、施策として実際に実施したあとは、その効果検証と改善点の洗い出しも重要です。マーケティング戦略の立案は1度切りで必ず成功するわけではなく、施策の効果や問題点を常に見つけて改善していくことでより効果的な戦略の立案に繋げていくことができます。

実施して終わりではなく、その後の対策によって戦略立案の工程を繰り返すようにしましょう。

マーケティング戦略を立案するうえで大切なこと

ここまでは、マーケティング戦略の成功例を紹介しました。成功例を参考にして企業独自のマーケティング戦略を考えるのもよいですが、適切な戦略を練るためには、次の3つの注意点を知っておくことも大切です。

マーケティング戦略を立案するうえで大切なこと
  • 営業部門との連携も重要
  • マーケティングの対象を広げすぎない
  • 複数のマーケティング手法を試して検証する

これらの注意点を意識しながらマーケティング戦略を考えれば、計画的に売上を伸ばせるようになるでしょう。以下では、マーケティング戦略を立案する際の注意点について詳しく説明します。

営業部門との連携も重要

商品やサービスについてまだ消費者に知られていないのであれば、マーケティングによって潜在的な顧客を掘り起こし、実際に手に取ってもらえるようなアプローチをおこなうことが重要です。

その中で、実際に顧客とやり取りを行う営業部門などとの協力が必要になる場合もあります。接客を行う部門から顧客に対して商品やサービスの魅力を上手く伝えてもらえるようにし、販売を後押ししてもらうためには、施策を企画する段階から営業部門とうまく連携しながら進めていくことが大切です。

マーケティングの対象を広げすぎない

売上をアップさせるために、なるべく多くの消費者をターゲットにしてアプローチしたいと考えるかもしれません。しかし、マーケティングの対象が広くなりすぎると、結果的にどのターゲット層にも響かない施策になってしまう可能性があるので注意が必要です。

先にも述べましたが、施策の成果を高めるためにも、あらかじめターゲットを細かく絞り込んでおくことが重要です。「誰にでも合う商品」よりも、「あなたのための商品」と言われたほうが、ターゲットの心を動かしやすくなります。

複数のマーケティング手法を試して検証する

マーケティングには、テレビCMや折り込みチラシ、DMやWEB広告など、さまざまな手法があります。慣れた方法があるからといって手法を限定してしまうと、効果が限定的になったり、時代の変化によって得られる成果が少なくなったりするかもしれません。

予算にもよりますが、なるべく幅広い手法を試して効果を分析し、高い効果が得られる手法に注力することで、マーケティング戦略の精度を高めることができます。

まとめ

ここでは、マーケティング戦略を立案する手順や注意点、実際にマーケティングに成功した企業の事例について説明しました。

多くの企業が何らかのマーケティング戦略に基づいて事業を展開しているため、さまざまな事例を参考にして企業独自の施策を考えられるようにしておきましょう。

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