おいしい料理をより多くの人に食べてもらうために、メニュー開発から仕入れ、調理や提供などを行うのが飲食店での仕事です。具体的にどのような職種があり、それらを仕事とするにはどのような魅力と、どのような大変さを持ち合わせているのでしょうか。今回は飲食店にかかわる仕事について、職種や仕事内容、どのような人が適しているかということまで解説します。

飲食店の職種と仕事内容

飲食店には規模の大小にかかわらず、さまざまな職種があります。店舗スタッフは現場を統括する店長やマネージャーといった正社員のほかに、アルバイトやパートタイムの従業員で構成されることが多くみられます。さらにアルバイトやパートタイムで経験を積んだあとには正社員登用という場合もあります。

ここでは、飲食店における職種とそれらの仕事内容について解説します。

飲食店の職種と仕事内容
  1. ホールスタッフ
  2. 調理スタッフ
  3. 販売促進
  4. 店舗開発
  5. 商品開発

職種1:ホールスタッフ

「ホールスタッフ」とは、飲食店における接客が主な業務内容です。具体的には、お客様から受けた注文を調理スタッフへ伝達し、料理が出来上がったら配膳を行います。そして食事を終えたお客様に対する会計も行います。他にも、来店したお客様を席へ案内したり、店舗によっては水やお手拭きなどを提供したりする接客業務や、予約などの電話対応、ホールの清掃なども含まれます。

ホールスタッフとしては「レストランサービス技能士」「接客サービスマナー検定」といった資格・検定試験もあり、接客サービスのスキルアップを目指すこともできます。

職種2:調理スタッフ

「調理スタッフ」とは、注文されたメニューを調理したり、食材の発注・管理を行ったりすることが主な仕事です。経験によって調理器具のメンテナンスや、メニュー開発や衛生管理を行います。また、調理スタッフとしての業務に2年以上従事すると、調理師免許取得に必要な調理師試験を受験することができます。

さらに、注文されたメニューを調理する調理スタッフのなかでも、下記のような専門分野に特化した職種もあります。

パティシエ

「パティシエ」とは洋菓子をつくる職人のことを指します。洋菓子店やホテル、レストランなどが主な勤務先で、洋菓子製造以外にもメニュー開発や仕入れ、調理器具の管理も行います。パティシエになるために必要な資格はありませんが、「菓子製造技能士」、「製菓衛生師」といった国家資格があります。現場で必要となる技能や知識が身につくだけでなく、キャリアアップのためのアピールポイントとしても役に立つ資格といえるでしょう。

ソムリエ

「ソムリエ」とは、レストランやホテルなどの飲食店において、客の好みや料理に合ったワインを提案する職人のことを指します。ワインに対する豊富な知識が必要になるほか、ワインを客にサーブしたり、ワインの説明を行ったりするためのコミュニケーションスキルも重要です。ソムリエになる必須資格はありませんが、一般社団法人日本ソムリエ協会が主催する「J.S.A.ソムリエ」「J.S.A.ワインエキスパート」といった呼称資格認定試験などがあります。

バーテンダー

「バーテンダー」とは、バーやレストランなどに設けられているバーカウンターなどでアルコール飲料やソフトドリンクの用意・提供をするのが主な仕事です。アルコール以外にも軽食やおつまみを提供したり、カウンター越しに接客をしたりすることもあり、ほかにも在庫管理や商品発注など業務内容は多岐にわたります。

バリスタ

「バリスタ」とは、コーヒーショップなどでコーヒーや軽食を提供するのが主な仕事です。コーヒーに関する幅広い専門知識とコーヒーをいれる高度な技術が必要になります。未経験からでも目指せる仕事ですが、深い知識と高い技術を学ぶための専門学校もあります。

職種3:販売促進

「販売促進」とは、店舗の売上向上を目指して、キャンペーンや季節イベントなどの企画立案や自社商品のプロモーションを行うことが主な業務です。店舗スタッフの研修や本部の運営サポートなども行います。

販売促進に関してはこちらの記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。

販売促進の基本知識を解説!目的や具体的な方法についても紹介

職種4:店舗開発

「店舗開発」とは、新店舗出店に向けて市場調査や競合他社のリサーチ、物件の選定などを行います。競合他社の多い地域での差別化を図る対策やターゲット層に合致した集客率の高いエリアの選定など、さまざまな分析力やマーケティング能力が求められます。出店後には、スーパーバイザー(SV)やエリアマネージャーとして担当エリアの店舗管理や売上管理を行うこともあります。

職種5:商品開発

商品開発は、調理スタッフ自ら行う店舗もありますが、大手の企業などでは専門業務として独立している場合もあります。新たなメニュー開発や既存メニューのレシピ改良などが主な業務であり、価格に見合った原材料の選定や競合との差別化を図るためのオリジナルメニューの開発など、発想力が求められます。また、調理スタッフにアルバイトを採用している場合、能力の高さに関係なく平均的に誰でも調理できるようなレシピをつくることも求められるでしょう。

商品開発に関してはこちらの記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。

商品開発はどんな仕事?具体的なプロセスや向いている人について

飲食店で働く魅力

飲食店の仕事に就くということで、従業員としてどのようなメリットを感じられるのでしょうか。ここでは飲食店で働くことの魅力について解説します。

お客様の反応を直接感じられる

自分たちで調理を行い、お客様へ提供したメニューに対して、「おいしかった」「ありがとう」というお客様の生の声を聞けることは、働くことへの充実感が得られる大きなポイントといえるでしょう。特にホールスタッフなど接客を直接行う職種の場合は、お客様との距離感が近いことで仕事のモチベーションにつながる場面が多いと考えられます。

さまざまな人と出会える

飲食店には日々さまざまな人々が客として訪れます。なかでもバーテンダーやソムリエのように、お客様との会話が必要となる職種の場合は、さまざまなバックグラウンドを持つお客様との話から、多くの刺激や影響を受け、自分自身へのプラスになることも考えられるでしょう。

接客・調理スキルが身につき、キャリアアップに役立つ

接客という業務は、料理を配膳するだけでなく、来店客を案内したり、注文や会計を行ったりと、お客様との間に多くの接点があります。そのため、言葉の使い方や立ち振舞いなどの接客スキルが自然に身についていきます。また、調理スタッフの場合、仕入れや仕込み、盛り付けなど調理技術や食品管理といった現場に必要なスキルを習得することができます。経験を重ねることで正社員登用される可能性も見込め、店長やマネージャーの業務を目の当たりにしながら店舗運営のノウハウも学んでいくことができるでしょう。

飲食店で働くうえで大変な点

接客や調理などいろいろなスキルを身につけられる飲食店での業務は、魅力的なことばかりではありません。ここでは、飲食店で働くにあたって大変な点を4つ紹介します。

飲食店で働くうえで大変な点
  • 勤務時間が長めなうえ、体力を使う
  • 休日が少なく、不規則
  • 賃金が低い
  • クレームや迷惑行為への対応が必要となる

勤務時間が長めなうえ、体力を使う

厚生労働省の「令和4年版過労死等防止対策白書〔概要版〕」によると、令和3年の宿泊業・飲食サービス業の長時間労働者の割合が14.0%と他の業種より多くなっています。さらに飲食店では、仕入れ食材を運搬したり、重量のある調理器具を扱ったりするなどの力仕事や、接客で店内の至るところを歩き回るなどの体力仕事が多くなります。当日の疲れを残さないように帰宅後や休日にはマッサージに行くなど、心身がリラックスできるように休息を取りましょう。

出典:「令和4年版過労死等防止対策白書〔概要版〕」(厚生労働省)(2024年2月27日に利用)

休日が少なく、不規則

飲食店の場合、土日や祝日、年末年始といった一般的な休日が繁忙期となることが多く、まとまった休みを週末や連休に取るということが比較的難しいと考えられます。また、飲食店によってはアルバイトやパートタイムの従業員が多く、正社員は店舗に1人しかいないといったこともあり、従業員が体調不良で休む場合に正社員がカバーしなければならないなど、正社員でも休みが不規則になることもあります。

そのため、先の予定は立てづらいですが、休みが平日になることもあり、娯楽施設やショッピングモールなどが比較的すいているというメリットがあります。平日休みになった場合は、土日と比較して人が少ないということを活用して、リフレッシュするようにしましょう。

賃金が低い

厚生労働省の「令和4年賃金構造基本統計調査の概況」によると、産業別の賃金は、男女計で「宿泊業,飲食サービス業」(257.4千円)が最も低く、女性では「宿泊業,飲食サービス業」(216.1千円)が最も低くなっています。そのため、飲食店に関わる仕事をしている人の離職理由の1つとして、賃金の低さが考えられます。

出典:「令和4年賃金構造基本統計調査の概況」(厚生労働省)(2024年2月27日に利用)

クレームや迷惑行為への対応が必要となる

接客スタッフなどは特に、お客様との接点が近い職種であるため、クレームや迷惑行為への対応が直接求められます。また、SNSの普及によって、お客様の不満がすぐに拡散されてしまうというのも近年の傾向です。接客することが多い飲食店においては、お客様が満足して食事を終えることができるよう、丁寧な対応を常に心がけることや、クレームに対する解決能力の向上なども図る必要があります。お客様からのクレームを真摯に受け止め、接客サービスの向上につなげていきましょう。

飲食店で働くのに向いている人

飲食店で働くことの魅力がある一方、大変な点もあるということを解説しました。そのなかにおいて、実際に飲食店で働くにはどのような人が向いているのか、3つ解説します。

飲食店で働くのに向いている人
  • コミュニケーションを積極的にとれる人
  • 普段から料理を作って食べるのが好きな人
  • 情報を集め、さまざまなアイデアを出せる人

コミュニケーションを積極的にとれる人

飲食店において、ホールスタッフ以外にも、先に紹介したバーテンダーやソムリエなど、お客様と直接対話をする機会のある職種は複数あります。食事を終えたお客様が「また来てみたい」と思えるようになるには、ホールスタッフだけでなく調理スタッフも含めてコミュニケーション能力を高める必要はあるでしょう。そうすることでリピーター獲得につながり、売上アップを期待することもできます。

普段から料理を作って食べるのが好きな人

実際にメニューの調理を行うスタッフだけでなく、メニューを開発する担当者や配膳を行うホールスタッフにおいても、料理を作って食べるということに対して興味・関心を持っている人の方が長続きしやすいと考えられます。仕入れた素材の持ち味を存分に活かしながら、どのようにしておいしい料理を提供できるかといったことを常に念頭におくことで、それ自体が仕事のモチベーションにつながります。

情報を集め、さまざまなアイデアを出せる人

特に競合他社の多い地域のような飲食店の場合、他店との差別化と集客を図るには、オリジナルのメニューや集客につながるサービスの提供が必須となります。そのため、常にアンテナをめぐらせて食のトレンドを収集し、メニューにおいても独創的な発想を生み出せるように常に視野を広げておくことが重要です。アイデアの引き出しが多いことでメニューだけでなくSNSでのキャンペーン実施にも力を発揮することができるでしょう。

飲食店の職種について、もっと詳しく知るには?

今回紹介した飲食店の職種内容について、詳しく知りたいという場合には、実際に現場で働く人の声を聞いたほうが、イメージをより具体化できるでしょう。その際には、以下のような経験者だけが知るような具体的な話を聞いてみるとよいでしょう。

  • 日々の業務内容
  • やりがい
  • 仕事の大変なところ
  • 給与面について
  • 今後のキャリアについて

また、飲食店経営者や商品開発者といった、なかなか直接会話ができないような立場の人の場合には、企業サイトやインタビュー記事などをインターネットで検索して情報を入手するのもひとつの手です。さらに学生であれば、インターンシップや職場訪問などで働く前に情報を得ることも可能でしょう。

まとめ

今回は飲食店について、主な職種や仕事内容、それらの魅力について解説しました。飲食店では規模にかかわらず、接客スタッフと調理スタッフ、メニュー開発スタッフなどのさまざまな職種があります。それらはいずれも顧客満足につながるための仕事であり、料理を作ること、食べることなどに興味・関心があることでモチベーションにもつながります。自分に向いているかどうかを吟味しながら、適した仕事を見つけてみてはいかがでしょうか。

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