形のあるものの商材を販売する場合とは異なり、形がなく目に見えない”サービス”を顧客に提供する場合、顧客側だけでなく提供側にとっても、商材の魅力やメリット、満足度などは、提供が終わるまで実感しにくいものです。そのため、サービスの場合のマーケティング手法は、それに特化した戦略「サービス・マーケティング」が重要となります。

今回は、サービス・マーケティングについての概要や考え方について、詳しく解説していきます。

サービス・マーケティングとは?

サービス・マーケティングと一般的にいわれるマーケティングとはどのような違いがあるのでしょうか。ここではサービス・マーケティングの特徴について紹介します。

サービスに対するマーケティングのこと

サービス・マーケティングとは、形のあるものの商材ではなく、サービス全般を商材とするマーケティング手法のことを指します。形が残らないサービスは形のある商品とは特徴が異なるため、同様の方法でのマーケティングでは正しい戦略を構築できない場合があります。そのため、サービスに特化したマーケティング戦略が重要となるのです。

モノの売り方でサービスを売るのは難しい

過去に考えられていたマーケティングとは、形のあるものの商材を販売することに対する仕組みづくりを指していました。しかし現代では情報というサービスをはじめ、旅行や飲食、ものに付随するサービスといった、形がなく目に見えないあらゆるサービスに対しても価値を持つようになり、それらが売れるようになったのです。そのため、同じ形のあるものの販売であっても、付随するサービスが比較対象となり、ものの持つ価値に着目するだけの販売戦略では売れないという現象も起きるようになりました。

サービスの特性を踏まえたマーケティングが必要

形がなく目に見えないサービスを売るためには、サービスの特徴にあったマーケティングが必要となってきます。形のあるものの商材に対する戦略には4P「Product(製品・サービス)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(プロモーション)」というマーケティング戦略の枠組みが活用されます。

それらに加えて、形がなく目に見えないサービスに対するマーケティング戦略の要素「3P」を加えたサービス・マーケティング・ミックスが必要とされるようになりました。サービス・マーケティング・ミックスについてはのちの項目で紹介します。

サービスが持つ4つの特性

実際に、形がなく目に見えないサービスというものにはどのような特性があるのでしょうか。ここでは、形がないサービスの例として、企業や店舗の売上を伸ばすサポートを行うコンサルティングサービス事業をあげながら説明していきます。

サービスが持つ4つの特性
  • 無形性
  • 同時性・不可分性
  • 異質性・変動性
  • 消滅性

無形性

サービスは形のあるものが商材であるのとは異なり、物理的な形がありません。そのため、顧客が商材を購入する(サービスを利用する)前に商材の内容や質を見極めることは困難といえます。

コンサルティングサービスの場合、売上を伸ばすアドバイスやミーティングといったものが商材であるため、本当にそのサービスで売上が伸びるのかということは実際にサービスを利用してみなければわからないのです。

つまり、顧客側からすれば、サービスの本当の価値がわかるのは利用後ということになるため、購入するまでには大きな決断が必要となります。そのことから、サービスの価格設定は難しいとされています。

同時性・不可分性

同時性とは、対人型のサービスの特徴ともいえるもので、商材の生産と消費がほぼ同時に行われるということを指します。

コンサルティングサービスの場合でいえば、コンサルタントが顧客にコンサルティングを行っているその時に、コンサルタントがサービスの生産を行い、顧客がサービスの消費を行っているということになります。ひとつの案件から生産と消費を切り分けることができないという意味で、不可分性とも呼びます。

サービスの同時性における問題点は、ひとつの案件の稼働率を高めない限り、利益の向上が見込みにくいということにあります。

異質性・変動性

異質性・変動性とは、サービス提供者の違いによって商材の質が変わるということを指します。

コンサルティングサービスでいえば、担当するコンサルタントが熟練者である場合と、入社したばかりの新人である場合とでは、受けられるコンサルティング内容や、コンサルティングによる結果や売上の伸びに相違があるかもしれないということです。

サービスの異質性・変動性の問題点は、無形性の問題同様に、サービスを利用したあとでなければ評価が見えないという点にあります。

消滅性

消滅性とは、形のあるものが商材である場合のような「作り置き」ができないということを指します。同時性の項目で説明したように、形がなく目に見えないサービスという商材は生産と消費がほぼ同時に行われます。

コンサルティングサービスでいえば、顧客へのアドバイスやそれに伴う調査・分析というものが商材となるため、コンサルタントが動かない限り商材が生産されることはありません。そのため、形のある商材のように季節性や市場の動向に伴う需要変動への対応が難しいのがサービスの特徴ともいえます。

7P(サービス・マーケティング・ミックス)とは?

先に紹介したように、形のある商品と形が残らないサービスとは特徴が異なるため、同様の方法でのマーケティングでは正しい戦略が難しくなります。そこで着目されているのがサービスに特化したマーケティング戦略である7P(サービス・マーケティング・ミックス)です。ここからは7Pについて詳しく説明していきます。

マーケティング・ミックスの4Pにサービスの3Pをプラスしたもの

7P(サービス・マーケティング・ミックス)とは、企業視点でのフレームワークである「4P」に、サービスに特化した3つのPをプラスしたもので、経営学者のフィリップ・コトラーが提唱しているサービス・マーケティングの概念です。企業視点の4P「Product」「Price」「Place」「Promotion」に加え、「人・要員(Personnel)」「販売や業務の過程(Process)」「物的証拠(Physical Evidence)」の3Pが加わっています。それぞれ詳しく説明していきます。

マーケティング「4P」について詳しくは下記のページもご覧ください。

マーケティングにおける4Pとは?戦略を立案するコツも教えます!

製品(Product)

自社の商品・サービスについて、どのようなものを顧客に提供するかを戦略立てていきます。顧客にとってニーズのあるものかどうかに着目し、自社が”売りたい”ものではなく、顧客が”求める”商材を企画することが重要となります。

価格(Price)

自社の商品・サービスをどのくらいの価格で提供するのかを検討します。競合他社との比較や価格帯によるターゲット層の設定を見極めると同時に、自社が得られる利益率を明確に把握することが重要です。

プロモーション(Promotion)

自社の商品・サービスの魅力やよさ、顧客にとってのメリットを伝えていく工程を指します。どのような販促媒体を用い、どの程度の予算で行うかなどを具体的に検討していきます。

形がなく目に見えないサービスという商材の場合には、顧客が疑似体験できるようなプロモーションを戦略として考えてもよいでしょう。

流通(Place)

自社の商品・サービスをどのようにして、どこで売るかという、販売までの経路や場所の検討をする要素です。企業側にとっての経路や手段の妥当性だけでなく、顧客がその場所に行くまでの価値があると思えるような商材であるかどうかを検討することもポイントとなります。

人・要員(Personnel)

ここからはサービス・マーケティング・ミックスの3Pがふくまれます。人・要員とは具体的には「従業員・顧客・関係会社」を指します。顧客へ提供するサービスの価値を高めるには、従業員や関係会社も重要となります。特に対人のサービスの場合、先に説明したような提供と消費が同時に行われる同時性への対応や、季節や閑散期といった変動性がある場合でも質の変わらない接客が必要です。

販売や業務の過程(Process)

顧客がサービスを提供されるまでの過程を指します。効率としての向上、体験としての向上が大きくわけて問われる要素です。先に紹介したコンサルティングサービスでいえば、顧客がコンサルティングを受けやすい環境であるか、申し込みをしやすい手順が設けられているかというのも過程として含まれるでしょう。

物的証拠(Physical Evidence)

物的証拠というのは、自社の商品・サービスの価値や特徴が目に見えてわかるものをあらわします。しかしこれまでも説明したように、サービスというのは形がなく目に見えない商材であり、特徴として無形性や消滅性をもっているため、サービス実施後に顧客に残るのは、体験の記憶やサービスを通して変動があった数字などの結果ということになります。そのため、顧客が満足して利用できるような証拠となる体験性が必要です。

まとめ

サービス・マーケティングは、無形性、同時性・不可分性、異質性・変動性、消滅性という4つの特性があることから、ものの持つ価値に着目するだけの販売戦略ではなく、顧客の体験にも着目することが大切です。

今回ご紹介したサービスの特性や7P(サービス・マーケティング・ミックス)を参考に、サービスに特化したマーケティング戦略を立ててみてください。

記事のURLとタイトルをコピーする