さまざまな価格帯のブランドがつらなり競合の多いアパレル業界において、消費者に自社ブランドを選んでもらうには、綿密なブランディングが重要となります。しかし、アパレル業界におけるブランディングとはどのような戦略を立てればよいのでしょうか。

今回は、アパレル業界におけるブランディングで消費者に共感を得られるためのポイントや、実際にブランディングに成功した事例をあわせて紹介します。

アパレル業界においてのブランディングとは

アパレル業界におけるブランディングとは、自社や商品について競合との差別化を図り、自社ブランドの価値を認知してもらうことです。ここではアパレル業界におけるブランディングがどういうものか、詳しく説明します。

「ブランド戦略」「マーケティング」との違いは?

ブランド戦略とは、ブランディングを行うための戦略のことを指します。一方、マーケティングとは商品を売るための全体的な戦略のことを指し、ブランディングによって規定された自社ブランドの価値に基づいてマーケティングにおける戦略を組み立てるため、順序としてはブランディングが先でマーケティングが後になります。

D2Cとは?

D2Cとは「Direct to Consumer」の略で、仲介する業者を挟まずに、企業が顧客と直接取引を行うというビジネスモデルです。仲介業者が間に入らないことで流通コストを抑えられるほかにも、顧客と直接つながるために自社ブランドの世界観をダイレクトに顧客に伝えることができるというメリットがあります。これらのメリットから注目されているビジネスモデルであり、スタートアップ企業だけでなく大手メーカーからの市場参入が進んでいます。

ブランド戦略のステップ

ブランディングを行うための戦略を図るには、いくつかのステップを踏むことが重要です。ここではブランド戦略のステップについて紹介します。

ブランド戦略のステップ
  1. コンセプトを明確にする
  2. 自社のマーケティングを行う
  3. 広告などを使って情報発信する
  4. ターゲットの求める価値を提供

ブランド戦略のステップ1:コンセプトを明確にする

アパレル業界とは、ブランドや商品によって価格帯が幅広く、競合の多い業界です。その多くの競合のなかから自社を消費者に選んでもらうためには、ブランドに対するイメージや価値観について、ターゲットとする顧客に共感してもらう必要があります。

そのため、自社がどのようなコンセプトでどのような価値を消費者に提供したいかということを明確にすることが重要です。わかりやすく親しみやすい言葉で表現しながらも、競合他社との差別化ができるコンセプト作りを行いましょう。

ブランド戦略のステップ2:自社のマーケティングを行う

ブランド戦略の際には、マーケティングも重要な要素となります。ターゲットの分析や市場調査、競合店の把握、顧客を自社へどのようにとり込むかというようなことは事前に明確にし、戦略を考えていきます。

なお、店舗型のビジネスの場合はメーカーから問屋、問屋から小売というつながりになっているため、メーカーと顧客との間には距離があります。しかし、インターネット販売が普及している現代では、店舗におけるマーケティングと異なる戦略や施策を行うことも大切です。自社サイトの運営強化など、顧客との距離を縮めるための自社ならではのマーケティングを考えましょう。

ブランド戦略のステップ3:広告などを使って情報発信する

自社ブランドのコンセプトや価値観といった、ブランドのアイデンティティを明確にし、SNSや広告を用いて広く発信していきます。消費者に共感を得てもらうことができれば、ブランドイメージアップを図れます。また、身につけることでワクワク感を抱いたり、自分をより魅力的に見せてくれたりするという、自社ブランドが提供できる楽しみに気づいてもらうことも、情報発信の目的となります。

情報発信をするSNSや広告媒体は、それぞれ特性があり、ユーザー層や広告費用も異なるため、自社ブランドに適切な媒体がどれであるかを吟味したうえで活用するとよいでしょう。

ブランド戦略のステップ4:ターゲットの求める価値を提供

ステップ3のように、SNSや広告を用いて自社のコンセプトや価値観を伝えていくだけでなく、消費者が実際に知りたい、手に入れたいという価値はなにかを把握し、提供していくことも重要なポイントです。消費者が興味・関心を持たない情報を一方的に発信するのでは、消費者は自社ブランドに対して価値を見出すことができません。自社のターゲットをしっかりと把握したうえで、それらのターゲット層が求めているものが自社ブランドのなかの何にあたるかを見出し、自社ブランドの付加価値として提供していきましょう。

ブランディングにおいて重要なポイント

ブランディングを進めるにあたり、いくつかの点に注意する必要があります。ここでは、ブランディングにおける重要なポイントを紹介します。

ブランディングにおいて重要なポイント
  1. 他社との差別化を図る
  2. SNSを活用する
  3. 自店舗の状況や立地条件を把握する
  4. 他店舗の戦術を学ぶ

重要なポイント1:他社との差別化を図る

冒頭に紹介したように、アパレル業界におけるブランディングとは、競合と差別化し、自社が求めるターゲット顧客にブランドの価値を認知してもらうことです。ブランドの種類や、店舗かインターネットかなど、さまざまな選択肢がある現代でも自社のブランドを選びたいと思ってもらえる工夫が必要です。

とはいえ、商品の機能性やデザインだけで差別化を図ることは、競合の多いアパレル業界では難しいのも事実です。そのため、商品価値はもちろん、ブランドのコンセプトや世界観といった付加価値の要素をアピールするなど、ブランド全体で他と違う魅力を演出することが大切です。

重要なポイント2:SNSを活用する

SNSは消費者との関係性を強化したり、自社ブランドのコンテンツへ誘導したりするために大いに活用したいものです。具体的には、文字情報や情報の拡散性に強いSNSではイベント情報やお得なキャンペーン情報などを発信し、視覚的な要素が強いSNSではスタッフによるコーディネートの紹介など画像を活用した発信を行います。ターゲット層にあったSNSの企業アカウントを運用して、なんらかの付加価値を求めている消費者に対して情報提供することで、既存顧客への更なるイメージアップはもちろん、新規顧客獲得も期待することができます。

重要なポイント3:自店舗の状況や立地条件を把握する

すでに出店している店舗の場合、地域の住宅環境や立地条件なども改めて確認してみましょう。自社ブランドのターゲット層にあった立地であるか、足を運びやすい交通手段があるかなどを再確認し、見合っているか同かを判断します。

客単価や購入頻度が減少していると感じられる場合には、リブランディングを行う必要もあるでしょう。リブランディングとは、時代やターゲット層の変化に応じて、改めてブランディングを行うことを指します。流行やさまざまな変化により、これまでの顧客よりも年齢層があがり新たなターゲットとなった年齢層の傾向とズレが発生した場合などにも、リブランディングを行います。

重要なポイント4:他店舗の戦術を学ぶ

競合が多いとされるアパレル業界において、生き残りを続ける企業はどのような戦略をとっているのかを調査・分析してみましょう。自社のブランドの売上が低迷していると感じられる場合には、成功している企業との相違を探してみることで、売上回復のポイントが見つかるかもしれません。

ブランディングの事例2選

数多くのブランドがつらなるアパレル業界において、着実な成功をおさめているブランドにはどのような成功の秘訣があるのでしょうか。最後に、アパレル業界のブランディングの成功事例について2つの企業を紹介します。

ユニクロ

ユニクロが世界的にシェアを拡大している理由に、企画・計画・生産・物流・販売のプロセスを一貫して行うビジネスモデルにあります。また、LifeWearというコンセプトのもと、世界中のさまざまな人々の日常を快適にするため、デジタル化が進む社会のなかで常に消費者とダイレクトにつながることで、消費者の要望をすぐに反映させるビジネスモデルを確立させています。

さらに、世界的なブランドやデザイナーとのコラボ商品の展開で特別感を出しながらも大量生産によって低コストを実現し、各国に適したブランディングを図ることで事業の拡大に成功しています。

参考:ユニクロ公式オンラインストア(ファッション通販サイト)

Everlane

Everlane(エヴァーレーン)とは、「徹底的な透明化」というコンセプトのもとに、商品の生産・販売にかかるコストを消費者に開示して、アパレル業界で注目を集めたアメリカのブランドです。Everlaneの公式サイトを見ると、商品の価格だけでなく素材費や金具費、人件費、税、運送費のコストも明示されています。また、価格の透明化だけでなく、商品の生産工場についても公式サイトで公開し、工場との出会いの説明や、実際に働く人々の様子も紹介しています。製造段階からの透明化によって、そのコンセプトの共感する消費者が増加した、差別化の成功例といえるでしょう。

参考:「エバーレーン」に学ぶ“徹底した透明性”とは 「時代遅れのビジネスに変革を」 – WWDJAPAN

まとめ

アパレル業界におけるブランディングは、競合の多い業界だからこそ差別化が重要です。商品価値はもちろん、コンセプトや店舗の雰囲気までブランド全体の魅力をアピールして、消費者に価値を認知してもらう必要があります。

コンセプトとターゲットを明確にし、競合他社の戦略も参考にしながら、消費者が共感できるブランド作りを進めてみてはいかがでしょうか。

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