企業が提供している商品やサービスについて知ってもらうために重要な「マーケティング」。うまくマーケティングをおこなえば効率的な集客が期待できるため、適切なマーケティング手法を身に付けておきたいと考える人は多いでしょう。

しかし、マーケティングにもさまざまな手法があるため、基本的な知識を身につけておかなければ求める成果を得られないかもしれません。そこで今回は、マーケティングの概要を説明するとともに、基本的なマーケティングプロセスやフレームワークもご紹介します。

まずはマーケティングの概要を知っておこう

マーケティングに関する理解を深めるために、まずはマーケティングの概要を知っておく必要があります。

以下では、マーケティングの定義や重要性について詳しく説明します。

マーケティングの定義とは?

マーケティング検定などを実施している「日本マーケティング協会」によると、マーケティングは以下のように定義されています。

企業やほかの組織がグローバルな視野に立ち、消費者との相互理解を得ながら公正な競争を通じておこなう市場創造のための総合的活動である

引用:公的社団法人日本マーケティング協会|日本マーケティング協会の概要

ここでいう「総合的活動」には、リサーチや商品、価格やプロモーション、流通や環境関係など幅広い活動が含まれています。マーケティングとは「消費者のニーズを満たす商品やサービスが、最適な形で提供される市場をつくる活動」であると認識しておくと、定義を理解しやすくなるでしょう。

マーケティングをおこなう重要性

近年マーケティングの重要性が高まっている理由として、日本が豊かになり、多くの市場が成熟したことが挙げられます。テレビ・冷蔵庫・エアコンなどの生活必需品が普及していないころは、製品を作ればその分だけ売れる時代でした。しかし最近では生活に必要なモノはすでに消費者が持っていることがほとんどです。誰もが「どうしても欲しい」と思うモノは少なくなっているため、従来のように商品やサービスが売れにくくなっているのです。このような時代では、企業から消費者に働きかけ、「欲しい」と思う気持ちを引き出す必要があります。

また、多くの市場で参入企業が増え、競争が激しくなっていることもマーケティングが重要な理由の1つです。そのような状況の中で売上を伸ばすためには、自社ならではの特徴をアピールし、消費者に価値を感じてもらうことが重要です。消費者のニーズを正確に把握し、適切な方法でターゲットに情報を届けるためにも、マーケティングをおこなう重要性は今後さらに高まるでしょう。

マーケティングの基本的なプロセスを知っておこう

マーケティングの定義や重要性を理解したら、次はマーケティングがどのようなプロセスでおこなわれているかを知っておきましょう。マーケティングの基本的なプロセスは、次の6つの段階に分けられます。

これらのプロセスを把握したうえでマーケティングをおこなえば、企業が提供する商品やサービスの魅力をうまくアピールできるようになるでしょう。以下では、マーケティングの基本的なプロセスについて、項目ごとに説明します。

環境の分析

まずは自社の内外の環境を分析することから始めましょう。

外部環境において見るべきポイントとしては、自社の所属する業界の市場規模や成長率、消費者の平均購入金額などが挙げられます。また、競合他社が販売しようとする商品やサービスにどのような特徴があるのか知っておくことで、競争を有利に進められます。

加えて、自社の状況も分析することが重要です。顧客数や売上高はもちろん、他社と比べて自社の強み・弱みが何なのかも明確にしておきましょう。

実際に環境分析をする際は、後述するフレームワーク(3C分析、SWOT分析、PEST分析など)を用いて分析するのがおすすめです。フレームワークにもさまざまな種類があるので、それぞれの特徴を理解したうえで企業に適した分析ができるようにしましょう。

市場の細分化

市場の細分化は「セグメンテーション」とも呼ばれ、市場を何らかの軸で切り分ける段階を指します。

一般的には、年齢や性別・職業・居住エリアなどの軸で市場を切り分けるケースが多いです。ほかにも、価値観や行動ニーズ、世帯数や子どもの有無といった項目で分類することが可能です。

ターゲットを明確にする

これは「ターゲティング」とも呼ばれ、市場の細分化(セグメンテーション)で分類したグループの中で最もアプローチがしやすい市場を明らかにすることをいいます。

オフィス用品を販売する企業を例にとって考えてみます。特定のエリアに住む人を職業と年齢で分類した場合、40~60歳代では製造業に就く人の割合が多いけれども、20~30歳代では比較的事務職が多いといったことが分かるかもしれません。

その場合、20~30歳代の事務職に焦点を当ててマーケティングをおこなえば売上を伸ばしやすくなると予想できます。

このように、分類したグループの中でどのターゲットに向けてアピールするかを明確にしておけば、企業が注力すべき部分を考えやすくなるでしょう。

ポジションの確立

これは「ポジショニング」とも呼ばれ、これまでに明確化したターゲットに対し、いかに企業の商品やサービスを選んでもらうかを考えます。

たとえターゲットが明確にできたとしても、同じターゲットに向けて競合他社がすでに何らかのアプローチをおこなっているかもしれません。他社と同じような商品やサービスを同じような手法で提供したとしても、うまく消費者を集めることはできないでしょう。

先ほどの例のように、20~30歳代の事務職に対して事務用品を販売したいと考えるのであれば、競合がどのような手法でどのような商品を販売しているのかをしっかり調査する必要があります。

たとえば、競合が「低価格」を売りにしている場合は、ある程度値段が高くても品質にこだわった商品を販売するのもよいでしょう。また、競合が実店舗型の販売に力を入れているのであれば、オンラインでの販売に力を入れるのもよいかもしれません。

マーケティングミックス

マーケティングミックスは、マーケティング業務に必要な要素をうまく組み合わせる施策のことをいいます。マーケティング業務に必要な要素は「4P」と呼ばれており、以下の4つが含まれています。

  • Product:商品やサービス
  • Price:価格
  • Place:販売経路
  • Promotion:広告や宣伝

周辺エリアの企業にプリンターを販売したいのであれば、「市場のニーズを反映して従来品よりも高機能なプリンターを開発し、1台10万円で販売する。販売方法としては、直接オフィスに足を運んで担当者に魅力をアピールする」といった方法が考えられます。

しかし、「4P」は企業目線の施策になりがちなので注意が必要です。消費者側の視点である「4C」も同時に考えることで、顧客満足度を高めつつ売上を伸ばせるようになるといわれています。「4C」には、以下の4つが含まれています。

  • Customer Value:顧客が感じる価値
  • Cost:顧客が支払う費用
  • Convenience:入手の容易さ
  • Communication:企業とのコミュニケーション

上述のプリンターを例にすると、「より鮮やかな印刷ができるプリンターを、本体価格のみで企業のオフィスに納品する。事前にプリンターを1ヵ月貸し出して使用感を試してもらってからこういう判断してもらう」といった戦略が考えられます。

「4P」と「4C」それぞれを意識しながらマーケティング戦略を練ることで、消費者のニーズを汲み取った商品やサービスを販売しやすくなることも知っておきましょう。

マーケティング施策の実施と評価

マーケティング施策を実施する際は、これまでのプロセスで設定したターゲットに対して実践的なアプローチをしていきます。WEB広告や体験イベントの開催、DMの送付や営業部門への見込み客情報の提供など、計画に基づいて施策を進めていきましょう。

期間内に思ったような成果が出なかった場合は、これまでのプロセスのどこかに原因があると考えられます。得られた結果に基づいて課題を抽出し、問題点を解消できるようにマーケティングのプロセスを練り直しましょう。

市場を分析する時に役立つ基本的なフレームワーク

ここまでは、マーケティングの基本的なプロセスについて説明してきましたが、市場を分析する際に「うまく分析が進まない」と悩む人も多いかもしれません。市場分析をうまく進めるためには、次のフレームワークを活用するのがおすすめです。

以下では、自社内外の環境を分析する時に役立つ基本的なフレームワークについて、詳しく説明します。

3C分析

3C分析は、経営コンサルタントの「大前研一」氏が提唱したフレームワークで、市場分析を次の3つの観点からおこなうのが特徴です。

  • Customer:市場や顧客
  • Competitor:競合他社
  • Company:自社

外部要因と内部要因を組み合わせて俯瞰的に市場を分析することで、自社の強みを活かした効果的なマーケティングを考えやすくなります。消費者に求められる製品を開発・アピールできれば、うまく売上を伸ばせるでしょう。

SWOT分析

SWOT分析は、カナダのマギル大学デソーテル経営大学院のクレゴーン記念教授「ヘンリー・ミンツバーグ」が提唱したフレームワークです。企業の外部環境だけでなく内部環境の分析も重点的におこなえるのが特徴です。SWOT分析では、次の4つの観点から分析をおこないます。

  • Strength:企業の強み
  • Weakness:企業の弱み
  • Opportunity:企業に有利になる外部要因
  • Threat:企業の脅威になる外部要因

このような観点で企業の状況を分析することで、市場における企業の立ち位置を俯瞰的に把握できるようになります。企業にとって有利になる外部環境の変化や強みを活かせれば、うまく売上を伸ばせるでしょう。また、企業の課題が明確になることで、新たなビジネスチャンスをつかむきっかけになることもあるので、弱みや脅威となる要因にしっかり向き合うことも大切です。

PEST分析

PEST分析は、アメリカの経営学者「フィリップ・コトラー」が提唱したフレームワークです。これまで紹介したフレームワークとは違い、マクロの視点で企業外部の環境分析をおこなうのが特徴です。PEST分析では、次の4つの観点から分析を進めていきます。

  • Politics:政治
  • Economy:経済
  • Society:社会
  • Technology:技術

的確に企業の置かれている状況を把握するためには、企業がコントロールできない外部要因について把握しておくことも大切です。マクロ環境を分析しておくことで、将来的に企業にどのような影響を与えるかを予測しておけば、先手を打ったマーケティング施策を実践できるでしょう。

まとめ

ここでは、マーケティングの定義や注力する重要性を説明するとともに、基本的なマーケティングプロセスやフレームワークについても解説しました。

企業の商品やサービスを多くの消費者の手に取ってもらうためには、マーケティングの基本的なプロセスをもとに、フレームワークを活用しながら的確な分析をおこなうことが大切です。ここで説明した内容を参考にして、企業に適したマーケティング施策を考えられるようにしておきましょう。

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