これから飲食店を経営しようと考えている場合、どのように準備を行えばよいのか、どうすればうまく運営し続けられるのか分からないと悩む人もいるのではないでしょうか。具体的な計画を持たずに飲食店を開業してしまうと、長期的に健全な店舗運営ができなくなるリスクがあるので注意が必要です。
今回は、飲食店経営のリスクが高く難しいとされる理由から、成功させるために必要な準備や成功者の特徴、ポイントを紹介します。
飲食店経営が難しい理由
2014年~2016年に「居抜き情報.COM」によせられた問合せの集計によると、飲食店を始めてから2年以内に閉店する割合は6割を超えており、1~2年目の廃業率が高いことが分かっています。開店しても最初の数年で経営がうまくいかないケースが多く、飲食業界は経営が難しいとされています。
飲食店経営が難しい理由の1つが「売上の伸び悩み」ですが、これにはさまざまな要素がからんできます。
たとえば、飲食店は他の業界に比べて薄利多売になりやすいです。メニューや規模にもよりますが、原材料費やスタッフの人件費など、利益を圧迫してしまう要素が多くあります。また、ライバル店舗が多いことも理由の1つです。たくさんの競合店がある中でうまく差別化や独自性のアピールができず、競争に負けてしまうケースがあります。
ほかにも、社会情勢の変化などにより外食産業全体が落ち込んでしまう場合もあり、外的要因を受けやすいことも廃業率の高さに影響しています。なお、これらの要因には「事業計画や資金計画がしっかりとできているか」が大きく関係します。開業前の準備段階から綿密な計画を行い、起こりうる問題に対処できるようにしておくことが大切です。
参考:閉店しやすい飲食店の特徴は!?居抜き情報.COMが過去に閉店した飲食店の傾向の調査結果を発表![2014-2016年版] 飲食店ドットコム 居抜き売却
飲食店経営を成功させる人の特徴
飲食店経営が難しいと言われている中で、飲食店経営を成功させる人もいます。飲食店経営の成功者には、以下の6つの特徴があります。
- 目標やコンセプトなどの設計が明確になってる
- 顧客のニーズをきちんと分析できている
- 飲食店での勤務経験がある
- 安全・衛生管理への意識が高い
- 従業員やスタッフと良好な関係が築けている
- 店舗の強みを明確にし競合と差別化できている
- 情報発信やSNS活用ができている
まずは飲食店経営者がなぜ成功しているのかを知っておけば、より成功に繋がりやすくなるでしょう。ここでは、飲食店経営を成功させる人の特徴について詳しく説明します。
目標やコンセプトなどの設計が明確になってる
飲食店経営においてまず重要なのが、経営や店舗運営における目標やコンセプトが明確であることです。自分がお店で何を実現したいのかがはっきりしている人ほど、その目標に向かって必要な準備や具体的な計画が立てられるようになります。
また、これらの目標やビジョンは経営者のみが意識するものではありません。従業員にも共有し店舗全体で共通の認識を持つことで、その飲食店自体の統一化に繋がります。自分が明確な目標を持ち、それをスタッフ全員にちゃんと共有できることが大切です。
顧客のニーズをきちんと分析できている
飲食店経営の成功者は、顧客のニーズを的確に分析できるのが特徴です。日頃からどの顧客がどのように店舗を利用しているのかを把握しているので、顧客のニーズに応じて柔軟にサービスを提供できます。
たとえば、店舗でアンケートをお願いし、人気の料理がなぜ選ばれているのか、または人気がない理由は何なのかや、料理のスピードや量について不満を感じている人がいないかなどをチェックすることも有効でしょう。顧客と積極的にコミュニケーションをとることで、より料理やサービスへのニーズや改善点を探ることができます。顧客満足度を高めるために常にサービスを改善できる飲食店は、ファンを増やして継続的に売上を伸ばし続けられるでしょう。
飲食店での勤務経験がある
自分で飲食店を開業する前に、飲食店での勤務経験を積んでおくこともおすすめです。接客やサービス、料理の味、メニューづくりなど、飲食店におけるさまざまな経験があると、自身の店舗経営のイメージや計画も立てやすくなります。
また、飲食店では従業員の労働時間の管理や食材や商品の在庫管理、発注業務なども行うことになります。事前に他の飲食店で勤務し、在庫管理やシフト管理を行うポジションにつくことができれば、それらの経験を活かすことができます。
安全・衛生管理への意識が高い
飲食店経営では当然ながら安全・衛生管理の徹底が求められます。食材を扱うからこそ、顧客が安心して利用できるように衛生基準やルール、規約を順守し安全性を高める必要があります。これらの取り組みは顧客がお店に対して持つ印象や信頼にも影響する要素なので、従業員1人1人に衛生意識をしっかりと教育し、清潔で安全な店舗を目指すことが大切です。
従業員やスタッフと良好な関係が築けている
従業員やスタッフを雇っている場合、1人1人との関係性や教育を疎かにせず良好な関係を築いていることも、飲食店経営に成功する人の特徴です。スタッフのスキルや熱量が高くなれば、店舗運営のパフォーマンスやサービスレベルも向上し顧客満足度にも影響します。よって飲食店経営者には、積極的に適切なコミュニケーションを取って従業員管理を行い、よいチームワークを築く力が求められます。
また、業界全体の変化やトレンドに対応できるように、常に知識やスキルをブラッシュアップすることも大切です。一度教育して終わりではなく、経営者自身も含め従業員全員が常にアンテナを張り、お互いにスキルアップを図れるような仕組み作りが重要になります。
店舗の強みを明確にし競合と差別化できている
飲食店経営の成功者は、店舗の強みを明確にできているのも特徴です。飲食業界は競争が激しい世界です。しかし、独自の強みを持っていれば他店と差別化を図りやすくなり、競合が多い業界の中で長く生き残ることができると言われています。
たとえば、他店で真似できないような料理を提供している店はそれだけで強みになります。地産地消の材料を使った料理や、シェフが修行した珍しい国の郷土料理など、当たり前に思っていたものでも、考え方を変えるだけで強みに変えることもできます。
また、来店した人に店舗の印象について率直な意見を聞いてみるのもよいでしょう。自身がイメージしている強みがお客さんに認知されていなければ、差別化するポイントについて見直す必要があります。
競合調査の基礎知識や手順について知りたい方はこちらの記事を参考にしてみてください。
情報発信やSNS活用ができている
顧客に向けた情報発信やアピールを欠かさず行っているかどうかも、飲食店経営の成功に差が生まれる要素です。SNSやホームページ、WEB広告などインターネットを利用することで顧客の目に留まる機会を増やすことが大切です。
特にSNSの活用は、飲食店の情報を手軽に発信できるだけではなく、来店客とコミュニケーションが取れたり最新情報をキャッチアップしたりするために必要なツールになっています。さまざまなSNSが日常的に利用されているため、飲食店の情報もSNSから収集している顧客も多く存在します。顧客を獲得できる可能性のある場所として、お店の存在やアピールポイントを知ってもらえるような情報発信の仕方を考えてみましょう。
飲食店開業を成功させるポイント
長く愛される飲食店を経営していくために、どんなことを準備しておけばよいのでしょうか。開業前に準備しておいたほうが良いことや、身に付けておきたい知識についてご説明します。
- 立地と地域住民に合う店づくりを考える
- 事業計画書や資金計画を作成し可能な限り費用をおさえる
- 開業前の宣伝を怠らない
- 信頼できる人や成功者に相談する
- PDCAサイクルを回す
立地と地域住民に合う店づくりを考える
まずは、店を開店するエリアと、その周辺に住む人たちのニーズにズレのない業態や営業方法を考えることです。たとえば、いわゆる「下町エリア」と呼ばれる地域に、高級料理店をオープンしても繁盛させることは難しいでしょう。その逆も同じです。
オープンしたいお店のイメージや料理のジャンルが決まったところで、そのジャンルのお店がよく出店しているエリアなどを調べます。また、出したいお店のターゲット顧客層を明確にし、そのターゲットとなる人たちはどんなエリアによく出向くのかを考えてみることも大切です。
立地の良い場所に出せば必ず成功するというわけでもありません。立地条件の良い場所は賃料が高いことも多く、利益を圧迫してしまう可能性があります。そのため、お店を出す場所を決める際は、そのエリアのニーズや出店する店舗の広さを適切に見極めることが大切です。
事業計画書や資金計画を作成し可能な限り費用をおさえる
飲食店経営をはじめる際は、まず事業計画書や資金計画を作成しましょう。事業計画書とは、主に公的・民間の金融機関に対して、どのように事業を運営していくのかを示すために、具体的なアクションまで落とし込んだ計画書のことです。金融機関などから資金を調達するうえで必要になるだけでなく、月間売上やコストなどの指標がどれくらいであれば利益が出るのかをイメージしやすくなるという利点があります。事業としての将来性や見通しを立てるためにも事業計画や資金計画はしっかり立てましょう。
また、なるべく開業資金などの初期費用を抑えることも重要です。金融機関などから融資を受ける場合は、初期費用を抑えることで借り入れ額を減らすことができるため、資金繰りが悪化するリスクを減らすことができます。平均的な立地と大きさの飲食店を開業する場合の相場は、1,000万前後といわれています。しかし、規模の小さい店舗を選び、設備などを最小限にすることで費用を300万~500万円程度に抑えることができます。
実際に事業計画書を作成する際は、以下の記事で書き方やテンプレートを紹介しているので、参考にしてみてください。
開業前の宣伝を怠らない
オープン直後からお客様を呼ぶには、開業前の宣伝が重要です。知名度の高い全国チェーン店などでなければ、宣伝をせずに集客をするのは難しいでしょう。競合店と差別化するためにアピールポイントを明確にし、その部分を強調した宣伝方法を考えましょう。
まずは、店舗の前に看板を置く、自店のホームページの作成やグルメサイトへの掲載、SNSによる宣伝、チラシ配りや周辺企業へのあいさつなど、最低限できる宣伝活動から始めましょう。とくに、X(旧Twitter)やInstagramなど無料で利用できるSNSは、広告費をかけずに宣伝できるためぜひ活用しましょう。
信頼できる人や成功者に相談する
飲食店の経営には、「この方法で経営をすれば必ず成功する」という絶対的な方程式は存在しません。だからこそ、開店前の準備や店舗の運営時のコストの見直しなど基本的なことの積み重ねが非常に重要です。
人件費を削減することで利益を出せるようになった店舗もあれば、食材にコストをかけるようにしたことで人気が出始める店もあります。さまざまな業態や経営方法の事例を知識として取り入れ、経営者としての見分を広げるためにも、経営について相談できる人を何人か見つけておくとよいでしょう。相談相手がいない状態で何年も経営をしていくと、常に自分の知識だけで判断することになり、誤った方向へ向かっていたとしても誰も指摘してくれません。
定期的に、店舗経営者の集まりに参加したり、税理士やコンサルタントなど、経営の事例をたくさん知っているプロに相談することも検討してみると良いでしょう。
PDCAサイクルを回す
もう一つのノウハウは、どのビジネスでも重要なことですがPDCAサイクルを常に回して改善を行っていくということです。
PDCAサイクルとは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)の4つのステップを常に繰り返すことによって、店舗の運営方法や経営を継続的に改善していく手法です。4つのうち、1つでもステップが欠けてしまうと成果が出にくくなってしまいます。
PDCAサイクルの例を紹介します。月間3%の売上アップの計画を立てて実行した結果、1%だけ売上が増加したとします。次に、なぜ3%と計画を立てたのに1%しか売上が上がらなかったのかを分析し、計画を見直します。そして次の月に、新たな目標を掲げ、達成に向けて計画を実行するという流れです。
最初に計画した方法が上手くいかなかった場合、改善のための打ち手を考えなければ、同じ結果に終わる可能性が高いです。売上やコストの実績、顧客情報を管理・分析して毎月サイクルを回していきましょう。また、改善策を考えるヒントとして、顧客にアンケートを実施するのも有効です。アンケートをしてもなかなか回答が集まらないときは、「回答すると一品プレゼント」などの特典を用意することも検討してみましょう。
飲食店経営を成功させるために集客グッズを活用しよう
飲食店を開業したあとは、経営に必要な業務を行うだけでなく集客にも力を入れましょう。先にも紹介したように、さまざまな場所で情報発信を行うことはもちろん、集客グッズを活用して顧客獲得を狙う必要があります。
飲食店の集客グッズとしては、主に以下のようなものがあります。
- 店頭に設置する看板やのぼり旗
- チラシの配布やポスティング
- ポイントカードの配布
これらの集客グッズによって、店舗の前を通る人や周辺地域の人に新規顧客になってもらえたり、1度利用した顧客にリピートしてもらえたりするようになります。先に紹介したSNSやホームページなどオンラインのツールと、ここで紹介しているオフラインのツールをうまく組み合わせながら、ターゲットにあわせた集客を行いましょう。
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