飽和状態の日本の飲食業界で新たな販路を見つけたいという時、想定されるのが海外出店です。現地の文化や価値観に触れることで自分自身に新たな価値観が生まれ、お店の付加価値として差別化を図るには海外出店も理想的ですが、どのようなトラブルが起こりうるのか未知のことも多いはずです。そのため、海外出店をする際にはどのようなことを想定すればよいのでしょうか。今回は、飲食店を海外に出店する場合のメリットとデメリット、海外出店までの流れについて解説します。

海外出店のメリット

飲食店を海外に出店することには、国内での競争から逃れるため以外にも複数のメリットがあります。ここでは、飲食店の海外出店に関するメリットを3つ解説します。

販路の拡大

国内において競争の激しい飲食業界で、生き残りを図るのは非常に難しいとされています。その熾烈な競争を避けつつ販路を拡大できるというのは、海外出店の大きなメリットといえるでしょう。加えて、少子高齢化が進むことでさらに顧客の取り合い競争の激しくなる国内よりも、日本食への関心が高まる海外へ目を向けたほうが利益を生む可能性が期待できます。国内に店舗をすでに構えている場合には、経営リスク分散にもつながるでしょう。

企業やブランドの価値向上

すでに国内に出店している店舗であれば、海外出店が進むことで「国際的に認知されている」「世界で注目を集めている」といったブランドイメージや付加価値がつくことも期待できるでしょう。競争の激しい国内市場では、差別化を図るためには付加価値があることは大きなメリットにつながります。

異文化の導入による新たな価値創造

海外という、文化の異なる場所に出店し、新たなビジネスを行うことは、経営者本人はもちろん、従業員にとっても視野が広がり、新たな価値観の発見につながる可能性があります。新たな価値観が身につくことでこれまでにないアイデアが生まれ、メニュー開発や国内においての差別化戦略にも活用できるでしょう。また、海外出店で手に入れたネットワークにより、新たなビジネスチャンスやさらなる販路拡大にもつながることが期待できます。

海外出店のデメリット

海外出店は新たなチャンスに恵まれるメリットがある一方で、異文化ならではのデメリットもあります。ここでは、海外出店のデメリットについて3点解説します。

言語・文化・商習慣が異なる

日本国内と海外との違いは、言葉の違いだけではありません。海外に身を置き、現地に住む人々を顧客として受け入れるということは、その国の文化や宗教、商取引に関する習慣や法制度についても深く理解をしておかなければ、大きなトラブルが発生する恐れもあります。特に宗教やジェンダーの価値観については、日本国内での価値観とは大きく異なります。本当に海外出店を進めたいのであれば、独自調査だけでなく、現地に精通したビジネスパートナーや企業との連携を図ることで、より円滑な出店を見込めるでしょう。

現地スタッフの管理・育成が難しい

海外出店では、国によっては現地人材を雇用することが法律で定められているため、店舗スタッフは日本人だけでなく現地の人々を雇うことも必要な場合があります。さらに海外では日本と比較して、待遇面に不満があったり、さらによい条件の職場が見つかったりすると即転職することも一般的な傾向です。価値観や働き方に関する習慣の異なる人々を採用するとなると、日本のようにきっちりとした管理体制では現地採用の従業員にとっては馴染めずに辞めてしまうということも考えられるでしょう。

また、国によって社会情勢や経済状況に差があることから、労働環境の整備やスタッフ管理も、その国の文化・価値観にあった仕組みを作ることが重要です。

カントリーリスクの影響を受ける可能性がある

「カントリーリスク」とは、商習慣の違いによって起こりうるリスクとは異なり、その国の社会情勢や政治・経済など、国自体の問題や習慣によって起こりうるリスクのことを指します。例えば、政治・経済情勢が不安定な新興国・発展途上国では、為替が大きく変動しやすいため、出店には慎重になる必要があります。また、宗教上の理由から肉類などの食事制約がされている国もあり、出店したいと思っても参入のハードルが高くなることも考えられるでしょう。カントリーリスクについては事前の情報収集や現地パートナーとの連携が重要です。

海外出店の流れ

海外出店へのメリット・デメリットを理解したうえで、いよいよ出店を進めたいという場合、どのような順序をたどっていけばスムーズに出店を進められるのでしょうか。最後に、海外出店時の一般的な流れを紹介します。

海外出店の流れ
  1. 情報収集
  2. 事業計画の立案
  3. 資金調達・補助金申請
  4. 物件選び
  5. お店づくり・開業手続き
  6. 現地スタッフの募集
  7. オープン

情報収集

まず必要となるのは、出店を決めた現地の情報収集です。できるだけ多くの情報を得るためには、雑誌やウェブ、知人の話など情報ソースは限定せず収集し、複数の国を想定している場合には、ニーズや流行の情報が古くならないように同時進行で進めましょう。具体的には、以下のような調査項目が挙げられます。

  • 市場規模や動向
  • 現地のトレンドやニーズ
  • 現地の法律
  • 競合店の有無
  • 物価や治安などの社会情勢

事業計画の立案

必要な情報を収集したら、それらの情報をもとに事業計画の立案を行います。事業計画の立案の際には、海外出店の目的とともに、「どこで」「なにを」「どのように」など5W2Hでコンセプトシートを作成するとより明確でスムーズに進められます。事業計画書は資金調達の際に大きな役割を果たすため、具体的に計画をたて、何度も見直すことが重要です。また、現地でのビジネスパートナーや連携企業の有無も資金計画に大きく関わるため、事業計画時にあわせて検討しておきましょう。

飲食店におけるコンセプトづくりについては、以下の記事もあわせてお読みください。

飲食店におけるコンセプトとは?考え方やアピール方法も紹介

資金調達・補助金申請

海外出店が自己資金だけでは準備できない場合には、新たに資金調達が必要です。公共の金融機関を例に挙げると、「日本政策金融公庫」があります。

また融資以外にも、国からの補助金が受けられないかを確認してみましょう。ただし、公的な補助金の場合は審査結果が出るまでに時間を要することが多く、申請したい補助金制度が見つかったら早めに申し込みを進めましょう。

物件選び

資金調達について見通しがついたらあとは、店舗となる物件選びの開始です。この際に優先的に考慮したいのが立地条件です。賃料や店舗面積、テナントビルであれば階数も確認しましょう。店舗以外にも人通りの多さや最寄りの交通機関も集客には重要です。自分のお店のコンセプトと照らし合わせながら、妥協できる部分と妥協できない部分を選択し物件を選びましょう。

また、日本とは価値観が異なることを充分考慮し、周辺の治安や地域住民の宗教については特に詳しく調べておき、ビジネスパートナーや企業がある場合にはアドバイスを求めてもよいでしょう。

また、物件選びに限らず、今後事業に関する契約書を交わす際には、法的な観点で不利益や問題がないかを弁護士などに確認してもらう「リーガルチェック」が必要です。弁護士や現地の経営コンサルタントのサポートを極力受けるようにしましょう。

お店づくり・開業手続き

希望する物件が見つかったら、店舗づくりと開業手続きを始めましょう。先に作成した事業計画とコンセプトに沿って、内外装やメニューの設定を進めます。内外装の工事は現地の業者へ依頼する必要があるため、メニュー設定もあわせて現地パートナーや企業と相談しながら進行しましょう。

開業手続きについては、現地の国の法律にしたがって、パートナー企業や経営コンサルタントに相談しながら適切に進めていきましょう。

現地スタッフの募集

オープン日の目星がついたら、続いては店舗スタッフの手配です。まずは、どのような業務にどのようなスキルの人材を何人採用するかを決定しましょう。さらに、日本国内でスタッフの確保ができる場合もあれば、現地の日本人、現地国民を募集する場合もあるなど、複数のパターンが考えられます。現地採用の場合には、その国ならではの採用方法に関する知識を調べておき、現地パートナーや企業、経営コンサルタントなどに相談しながら進めていきます。万が一、現地採用についてのコネクションが見つからない場合には、海外就職に特化した求人サイトや現地の人材紹介サービスなども活用するのもよいでしょう、

オープン

開業までの手続きやスタッフの確保ができたら、いよいよ念願のオープンです。スタッフの教育と並行して、宣伝活動を行っていきましょう。日本の文化や価値観とは異なるのと同様に、どのような宣伝方法に関心を示すかは国によって異なります。せっかく海外出店を果たすのであれば、多少コストはかかっても、現地の住民に興味を持ってもらえるような販促活動を進めていきましょう。また、オープン後についても、事業計画は定期的に見直しや最適化を図ることも重要です。

まとめ

今回は、飲食店を海外に出店する場合のメリットとデメリット、オープンまでの流れについて解説しました。日本国内の熾烈な競争から逃れて、新たな付加価値とともに差別化を図れることが海外出店のメリットです。一方で、文化や価値観の違いや宗教による食事制約など、日本では想像できないことが海外出店で生じる可能性があります。それらを充分に把握したうえで海外出店を目指す場合には、現地のパートナーや経営コンサルタントからの助言も受けながら、海外出店を進めてみましょう。

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