飲食店を経営するにあたりコンセプト作りはとても重要です。時間の経過とともに経営方針が変わったとしても、コンセプトがずれていなければ長く利用し続けられる飲食店となるでしょう。

この記事では飲食店のコンセプト作りの考え方や重要性、顧客へのアピール方法について詳しく解説します。

飲食店のコンセプトとは?

まず、コンセプトとは「テーマ」や「方向性」のことを指します。つまり「こんな店舗」と表したもののことです。飲食店開業にはコンセプト以外にも店舗の店名や内装など、様々な要素を決めていく必要性があります。そんな中でコンセプトが決まっていれば、店名や内装といった要素を考える軸にもなります。

例えば、「いつでも気軽に、ゆっくりくつろげるカフェ空間」というコンセプトを決めると、店舗名は気軽に寄ってもらえるような親しみのあるものに、内装の照明やテーブルは落ち着いた雰囲気の色を使ったものを配置するなど、具体的なアイデアが出しやすくなります。

先に店舗名や内装が決まっている場合でも、あとからコンセプトを見直すといいでしょう。店舗の強みを活かせるようなコンセプト設定ができると、「このお店は○○なサービスがある」「このお店の○○な雰囲気好き」と顧客の店舗に対するイメージが定着しやすくなります。そうすることで、顧客と店舗とのミスマッチが少なくて済んだり、リピートに繋がりやすくなるのです。

5W2Hで考える顧客が魅力を感じるコンセプトづくり

他店との区別化を図るためにも、顧客がより魅力を感じる自店ならではのコンセプトを作る必要があります。

下記の表は「5W2H」を活用して飲食店のコンセプト例を考えたものになります。

5W2Hを活用した飲食店のコンセプト例
  • When(いつ)17時から24時
  • Where(どこで)駅周辺
  • Who(誰に)仕事帰りの会社員
  • What(何を)アルコールやおつまみ
  • Why(なぜ)気軽に立ち寄れるお店を作りたかったから
  • How much(いくらで)1品500円程度
  • How(どのように)SNSで集客をする

どのようにして店舗のコンセプトを決定すればよいか「5W2H」の各項目ごとに解説します。

When(いつ)

まず、「When(いつ)」は営業時間です。

同じ業態の店舗はどの時間帯に来店数が多いのか、事前に調査するとよいでしょう。また、自分が店舗を構えたい場所の周辺で人の流れを確認しておくと、どういった人が自店の顧客になりそうかイメージしやすくなります。

Where(どこで)

「Where(どこで)」はどのエリアに出店するのかを指します。

エリアや物件選びは次に説明する「Who(誰に)」にも繋がるため、飲食店経営においてとても重要なポイントです。オフィス街なのか、駅から近いのか、商店街なのかによって顧客層が変わってくるので、出店したいエリアの特徴は把握したうえでコンセプトを考えることが大切です。

Who(誰に)

「Who(誰に)」はターゲットとなる顧客層のことを指します。

先ほどの「Where(どこで)」が決まれば顧客層もある程度絞られてきますが、その中でも年齢層や性別、どういった職業の人なのかなどを具体的に決めることで、コンセプトもイメージしやすくなるでしょう。

What(何を)

「What(何を)」はどういったメニューを提供するかについてです。

例えば、食べる量に気を遣っている20代の女性OLと、満腹になるまで食べたい50代の男性サラリーマン。20代の女性OLの方は、料理が小鉢に入っており、好きな小鉢だけ選べるといったスタイルが好まれるかもしれませんが、50代男性サラリーマンの場合は量が多くおかわりも一杯無料といったメニューが好みかもしれません。このようにメニューの基本方針もコンセプトに反映させやすくなります。

Why(なぜ)

「Why(なぜ)」はなぜこの店舗を創業したのか、なぜこの店舗名なのかなど、創業の理由や飲食店を経営している目的のことを指します。

飲食店を開業するのには、何かしら理由があって開業することでしょう。この「Why(なぜ)」の部分が明確であると、店舗のコンセプトが決めやすくなる上に、顧客にもなぜそのコンセプトなのか納得してもらいやすくなります。

How much(いくらで)

「How much(いくらで)」は飲食店の料理やサービスをいくらで提供するかについてです。

どんなに自信があるメニューやサービスがあったとしても、価格が見合っていなければ意味がありません。そのためにも競合店と同じ価格帯にするのか、安くするのか、高くして付加価値を加えるのかなど、競合店を調査し自店ならではのコンセプトは何か考えてみるといいでしょう。

How(どのように)

最後の「How(どのように)」はどのように飲食店をアピールするかについてです。

アピール方法は広告やSNSといったオンラインでの方法や、店舗前の看板やチラシといったオフライン方法など数多くあります。例えば20代女性OLのターゲットがスマートフォンやパソコンを見る機会が多いと仮定すれば、チラシよりも、SNSでのアピールのほうが合っているかもしれません。店舗に合った集客をするためにも、自店にはどのような集客方法がいいのかを考えることで、店舗のコンセプトも考えやすくなります。

店舗にあったコンセプトを決める際には、コンセプトシートの活用がおすすめです。コンセプトシートには「5W2H」や、「立地・ターゲット・ポジショニング」といった内容を書き出して、どのように店舗をアピールするか具体的にイメージしていきます。

マネケルでは、飲食店のコンセプトづくりに活用できる「5W2Hのコンセプトシート」を無料でご用意しております。下記のボタンからぜひダウンロードしてみてください。

5W2Hコンセプトシート

飲食店のコンセプト例


飲食店のコンセプト例を2つ紹介します。飲食店のコンセプトを考える際の参考にご活用ください。

・コンセプト例①:その日の朝、市場で買い付けた魚のみを使用するお寿司屋
このお寿司屋は市場の近くに店舗を構え、その日取れた新鮮な魚のみを使用し、お寿司を提供しています。市場の近くに店舗があることから魚を輸送するコストを省くことができ、低価格での提供を実現しています。

・コンセプト例②:一杯ずつ豆から丁寧に珈琲を淹れるカフェ
このカフェでは、ベテランの店主が豆から一杯ずつ丁寧に珈琲を入れるため、味だけでなく、匂いも楽しむことができます。また、店主が珈琲に関する知識が豊富で珈琲を楽しみながら、同時に珈琲の知識を深めることも可能です。

飲食店のコンセプトづくりで注意しておきたいこと

「5W2H」について考えたら、次はどういったコンセプトがいいのか固めていきます。ここでは飲食店のコンセプトを考えるときの注意点についてご紹介します。

コンセプトが店舗経営に反映させられるかを考える

まず、決めたコンセプトが店舗経営に反映させることができるかを考える必要があります。コンセプトを基に飲食店を経営することをイメージしたときに、非現実的なことが書かれていると、今後の経営方針がバラバラになってしまう可能性があります。経営方針は自分のみならず、従業員や顧客にも影響があるため、本当に実現可能かどうか確認することが大切です。

5W2Hがあてはまるか確認する

2つ目に「5W2H」がすべて一致するか確認しましょう。例えば「When(どこで)」が「オフィス街」、「Who(だれに)」が「30代専業主婦」だとなかなかマッチしづらいでしょう。それぞれが一致していないとコンセプトとのズレも生じてくるため、確認することが重要です。

飲食店のコンセプトを顧客にアピールする方法

飲食店のコンセプトが決まったら、集客するためにも顧客にアピールしていきます。ここではコンセプトをより魅力的にアピールする方法を解説します。

顧客に端的に伝わるキャッチフレーズにする

コンセプトは端的に伝えられるキャッチフレーズにするのがおすすめです。長い文章などでは伝わりづらいですが、誰でも理解できるような端的なものであれば印象にも残りやすいでしょう。

例えば「いつでも気軽に、ゆっくりくつろげるカフェ空間」がコンセプトであれば、「みんなの居場所」のような端的なキャッチフレーズが店舗の雰囲気をイメージさせやすくなるでしょう。

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コンセプトに沿って内装や外装を決める

先ほどの「いつでも気軽に、ゆっくりくつろげるカフェ空間」というコンセプトを例にとると、外装は派手な色や見た目よりも、柔らかく落ち着いた印象の色や見た目のほうが合うでしょう。内装もテーブルや食器、従業員の服装など、細かいところまで店舗のコンセプトを基準に決めることで、顧客にも自然とコンセプトが伝わりやすくなります。

コンセプトに基づいた接客をおこなう

接客の仕方もコンセプトに基づいて行うといいでしょう。例えば「賑やかで活発な雰囲気」が店舗のコンセプトの場合、従業員の挨拶や接客の対応もそれに合わせることで、顧客が店舗に持っているイメージとの差が生まれにくくなります。

顧客からすると店舗の従業員一人ひとりを「個人」として見ているわけではなく、「店舗の人」として見るため、オーダーの取り方や電話対応など、どのスタッフでも同じような対応ができる必要があります。そのためにも接客マニュアルもコンセプトに基づいて作成するなど、細かいところまでこだわるといいでしょう。

コンセプトにずれが出ていないか定期的に確認する

長いこと飲食店を経営していると経営方針が変わることがあります。その際、経営方針がコンセプトとずれてしまうことが起きかねません。

例えば、どうしても価格を上げる必要が出てきた場合、最初に決めた「How much(いくら)」が変わってきます。場合によっては価格が上がることで利用をやめてしまう顧客もいるかもしれません。そんな時は何か付加価値をつけることができないかなど、改めてコンセプトにずれが出ていないか定期的に確認するといいでしょう。

まとめ

飲食店のコンセプト作りは、経営方針を決める指標とも言えます。より長く飲食店を経営していくためにもターゲットとする顧客に自店の強みは何なのかアピールし、利用し続けられる店舗にしていく必要があります。

コンセプトが決まれば、自店に合った集客方法もイメージしやすくなるでしょう。すでに飲食店を経営されている方でも、今回ご紹介した「5W2H」を書き出し、自店の店舗コンセプトはなにかを明確にしてみてはいかがでしょうか。

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