食料品に衣料品、家電や生活雑貨など、暮らしにまつわる多彩な商品が揃う大規模小売店であるGMSは、顧客のニーズを一度に応えてくれる量販店です。GMSはどのような仕組みによって成り立っていて、似たような業態のショッピングセンターやスーパーマーケットとは、どのような違いがあるのでしょうか。今回はGMSについての歴史や特徴、他の業態との違いや抱えている問題について解説していきます。

GMS(総合スーパー)とは?

マーケティングの用語として使われるGMSは、「General Merchandise Store(ゼネラルマーチャンダイズストア)」の頭文字をとったものであり、総合スーパー、大規模小売店、量販店のことを指します。スーパーマーケットが取り扱う食料品だけでなく、衣料品、家電、生活雑貨などさまざまな種類の商品を取り揃えているため、1箇所で買い物をすませることが可能です。代表的な店舗としては、イオン、イトーヨーカドー、イズミがあります。

GMSの歴史

GMSは1900年代はじめにアメリカで誕生しました。アメリカは国土が広く、週末に車や自家用軽飛行機などを利用して家族揃ってGMSでまとめ買いをするというのが文化として定着していったと考えられています。アメリカのGMSでは、衣料品、家電、家具などが主な取り扱い商品ですが、日本ではさらに食料品も取り扱っているというのが特徴です。

GMSの定義

GMSの定義としては、経済産業省による「商業統計調査」の「業態分類の定義」では、総合スーパーとして「衣食住にわたる各種商品を小売し、そのいずれも小売販売額の10%以上70%未満の範囲内にある事業所」「従業員者が50人以上の事業所」とされています。また、総合スーパーのなかでも、3000㎡以上(都の特別区及び政令指定都市は6000平方メートル以上)は「大型総合スーパー」、3000㎡未満(都の特別区及び政令指定都市は6000平方メートル未満)は「中型総合スーパー」と呼称が変化します。

GMSでは、販売形式にセルフサービス方式を採用しているのも特徴の1つです。セルフサービス形式の定義は、以下の通りです。

  • 目札などによってお客様が商品の値段が分かるようにしていること
  • 買い物かご、ショッピングカート、トレーなどによって、お客様が自由に商品を選ぶことができること
  • 清算所(レジ)において、お客様が一括で代金の支払いを行うシステムとなっていること

また、上記の条件に該当する売り場面積を50%以上保有し、実際に商品の販売を行っている事業所を「セルフサービス方式採用事業所」と呼ばれています。

参考:指数でみた卸売業の動き|2005 我が国の商業|商業統計|経済産業省
参考:調査の結果|商業統計(METI/経済産業省)

GMSの特性

多彩な商品を取り扱っているGMSは、集客率向上のためのさまざまな特徴を持っています。ここでは、GMSの特性について3つ解説します。

GMSの特性
  • 大量の仕入れによってコストを抑えている
  • 多種多様の商品があるため、集客につながりやすい
  • プライベートブランド(PB)に注力している

大量の仕入れによってコストを抑えている

GMSでは、商品を大量に仕入れることで、単品で仕入れるよりも単価を安くし、コストを抑えています。また、仕入れに関する業務は本部が一括で行い、販売業務を各店舗が行うというオペレーションにより、利益を最大化させる方法を採用しているのもGMSの特徴です。

多種多様の商品があるため、集客につながりやすい

食料品も衣料品も家電も揃うGMSは、顧客が複数の店舗をはしごする必要がなく一度で買い物を済ませられるため、利便性がよく、集客率の向上につながります。

プライベートブランド(PB)に注力している

PBとは、GMSなどの小売業が自ら企画・開発・販売を行い、生産は他社工場に委託して行う独自のブランド商品を指します。低価格・高品質を重視し、競合他社との差別化を図っています。代表的なものとしてイオンの「トップバリュー」や、セブン&アイ・ホールディングスの「セブンプレミアム」などがあります。

GMSと他の業態の違い

多彩な商品が揃い、PBにも注力しているGMSですが、他の業態とは具体的にどのような違いがあるのでしょうか。ここでは、スーパーマーケット、ショッピングセンター、ホームセンター、コンビニエンスストアとの違いについて解説します。

GMSと他の業態の違い
  • スーパーマーケット(SM)との違い
  • ショッピングセンター(SC)との違い
  • ホームセンター(HC)との違い
  • コンビニエンスストア(CVS)との違い

スーパーマーケット(SM)との違い

SMとは、「Super Market(スーパーマーケット)」の頭文字をとったものです。経済産業省の業態分類では、SMの定義は「『衣食住』の商品いずれかの取り扱いが70%以上であること」「売り場面積250㎡以上」「セルフサービス方式を採用していること」があげられています。さらに、食品の扱いが70%以上なら「食料品スーパーマーケット」、衣料品が70%以上なら「衣料品スーパーマーケット」、住関連品の取り扱いが70%以上なら「住関連スーパーマーケット」とされています。

SMは、本部の一括仕入れによる低コストの実現や、チラシ広告での集客により大量販売を行っていることなどはGMSと共通しています。

参考:指数でみた卸売業の動き|2005 我が国の商業|商業統計|経済産業省

ショッピングセンター(SC)との違い

SCとは「Shopping Center(ショッピングセンター)」の頭文字をとったものです。一般社団法人日本ショッピングセンター協会によると、SCとはSCデベロッパー(大型商業施設の開発業者)が計画・開発を行うものであり、「小売業の店舗面積1,500㎡以上」「キーテナントを除くテナントが10店舗以上」「キーテナントの面積がショッピングセンター面積の80%程度を超えないこと(テナントのうち小売業の店舗面積が1,500㎡以上である場合には、この限りではない)」「テナント会(商店会)等があり、広告宣伝、共同催事等の共同活動を行っていること」という条件が必要とされています。

代表例としてあげられるイオンモールやららぽーとなどからもわかるように、SCには、核となるGMSの他に、専門店やレジャー施設、映画館、旅行代理店などのサービス業がテナントとして出店しているのが特徴です。顧客にとっては、食料品や衣料品などの買い物だけでなく娯楽や食事も一箇所で楽しめるのが魅力といえるでしょう。

参考:SCの定義/用語解説 | 一般社団法人 日本ショッピングセンター協会

ホームセンター(HC)との違い

SMの説明のなかで、住関連品の取り扱いが70%以上なら住関連スーパーマーケットであると紹介しましたが、その住関連スーパーマーケットのうち、金物・荒物・種・種子の取り扱いが0%超え70%未満であることがホームセンターの定義です。さらに「売場面積250平方メートル以上」「セルフサービス方式の採用」も定義に含まれています。

コンビニエンスストア(CVS)との違い

「Convenience Store(コンビニエンスストア)」の頭文字をとったCVSは、経済産業省の業態分類では「飲食料品を取り扱っている」「売り場面積30平方メートル以上、250平方メートル未満」「一日の営業時間が14時間以上」と定義されています。取り扱い商品は食飲料品、日用品、化粧品など幅広いものの、売り場面積が限られているため、GMSと比較して商品点数は少ないですが、全国に数多く点在しており、高い利便性が特徴です。営業時間が14時間以上と定義されていますが、実際には終日営業が多く、GMSと同じ小売店とはいえ、顧客層も異なっているのが特徴といえるでしょう。

GMSの企業例「株式会社イズミ」

株式会社イズミは、中国、四国、九州にGMSを64店舗展開しています。2022年2月時点でイオンリテール、イトーヨーカ堂に続く、日本を代表するGMSとなっています。顧客のニーズに応えるべく、地域に根ざした店舗経営を行っており、2021年には「ゆめタウン浜田」に島根県労働者福祉協議会が運営するキャリアアップ支援施設「就職サポートセンター島根 浜田事務所」をオープン、さらに「ゆめタウン東広島」には、NPO法人陽だまりが運営する「コミュニティカフェ funfan陽だまり」をオープンさせました。さらに翌2022年には「ゆめタウン山口」が大内連合自治会と協定を結び、災害時対応としての避難場所の提供を約束しています。

参考:株式会社イズミ統合報告書(2022年)

GMSの今後

これまでのGMSは、週末のまとめ買いなど購入頻度の多い食料品で集客を図り、原価率が低く利益を見込める衣料品で収益を高めるというのが基本的な仕組みとなっていました。しかし、大型衣料品専門店や、インターネットの普及に伴う衣料品ネット販売の台頭によりその仕組みが崩れ、さらに遠出してGMSに行かなくてもコンビニエンスストアで買い物を済ませられるなどの利便性が高まったことから、顧客にとってのGMSの必要性に変化が起こっています。新たなビジネスモデルの発掘など、経営手法を変革することが今後のGMSの発展につながるといえるでしょう。

まとめ

今回は、GMS(総合スーパー)についての特性や、SMやSCとの違いを解説しました。食料品以外にも衣料品や家電、生活雑貨など多彩な商品を取り揃えているGMSは、顧客にとって一度にさまざまなニーズに応えてくれる利点があります。一方で、近年の大型衣料品店やインターネット販売の台頭により、衣料品販売で利益を得られてきた本来のGMSの仕組みが崩れているという問題もあります。問題解決によりGMSが今後どのような発展をとげていくのか、ビジネスモデルのひとつとして注目してみてはいかがでしょうか。

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