チラシや動画などによる「広告」を扱ううえで気をつけたいのが「著作権に関する問題」です。いくら効果の高い広告物を作成したとしても、著作権を侵害する内容であれば、思わぬトラブルを引き起こしかねません。

昨今、著作権に関するトラブルは増加傾向にあり、場合によっては多額の罰金を支払うような裁判の事例もあるほどです。そこで、本記事では著作権に関する基礎知識に触れながら、「広告の著作権は誰のものか」「引用との関係性とは」といった内容について解説します。

広告にも著作権はある?著作権に関する基礎知識

広告は「写真」「動画」「イラスト」「キャッチコピー」といったさまざまな素材によって構成されます。その内容については、完全にオリジナルのものもあれば、他のコンテンツの一部を参考にする場合もあるでしょう。

よって、広告を扱ううえでは著作権に関する正しい理解が欠かせません。ここでは、著作権の概要や保護期間といった基本知識を解説します。

そもそも著作権とは

著作権とは、著作物を保護するための権利を指します。また、著作権によって保護され、思想や感情を創作的に表現したものを著作物と呼び、例として、次のようなものがあります。

  • 小説
  • 音楽
  • 絵画
  • 地図
  • アニメ
  • 漫画
  • 映画
  • 写真など

また、広告における著作権に該当するかどうかの要件は次の4つです。

  • 思想または感情
  • 創作性
  • 表現されたもの
  • 文芸、学術、美術または音楽の範囲に属する

一方、著作物に該当しないないものとして、例えば業界紙に掲載されていた単なるデータやグラフなどがあります。単なるデータが該当しない理由は、思想又は感情を表現したものでないからです。広告における著作権に該当するかどうかを迷う場合は、上記の4要件に当てはまるかを確認し、判断しましょう。

参考:広告は誰のもの? | ウェブ電通報

広告にも著作権は存在する

広告における著作権は「広告自体に関する著作権」と「広告に使用する素材の著作権」の2種類が存在します。いずれの著作権も侵害することなく、適切に運用することが重要です。

広告自体もレイアウト、キャッチコピー、画像、キャラクターなどの要素によって著作権が発生します。広告の著作権問題トラブルとなりやすい著作物には、以下のようなものがあります。

【広告に使用する著作物の例】

  • 掲載した写真
  • イラスト
  • キャラクター
  • コピー(キャッチコピー、説明文など)
  • ロゴ
  • チラシデザイン

著作権の保護期間

著作権には保護期間があり、「作品の公表後、著作者の死後70年以上経過」すると著作権を消失します。2018年12月30日「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定」が日本において効力が生じたことで、それまで50年としていた保護期間は70年になりました。

なお、創作した時点で著作権が発生するため、著作権を得るための手続きなどは特に要しません。著作物の種類における保護期間は次のとおりです。

著作物の種類 保護期間
実名(周知の変名を含む) 生存年間及びその死後70年
無名又は変名 公表後70年(死後70年経過が明らかであれば、そのときまで)
団体名義 公表後70年(創作後70年以内に公表されなければ、創作後70年)
映画 公表後70年(創作後70年以内に公表されなければ、創作後70年)

「死後」「公表後」「創作後」に関する期間は、それぞれが生じた翌年の1月1日を起算日とします。ただし、保護期間中であっても、その著作権者に相続人がいない場合は、そのまま著作権は消滅するので注意しましょう。

参考:著作者の権利の発生及び保護期間について | 文化庁

広告の著作権は誰のものか

著作権について調べるなかで「そもそも広告の著作権は誰のものか」といった点に疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。広告の著作権が誰に帰属するのかを理解するためにも、ここでは「動画広告」「求人広告」の2つについて詳しく解説します。

動画広告の場合は広告主

テレビCMやYouTubeなどで流れる動画広告の著作権は原則、広告主に帰属します。それ以外の音声広告や映像広告はクリエイター、または広告会社と制作会社が共同する形になるのです。

例えば、CM原版については制作会社や広告代理店ではなく、映画制作者に帰属すると認められた事例もあります。動画広告に関する契約を締結する場合には、著作権の帰属に関する条項の内容を事前に取り決めておく必要があるでしょう。

参考:広告は誰のもの? | ウェブ電通報

求人広告の場合は掲載媒体

企業が各種のメディアに求人情報を掲載する求人広告の著作権は、掲載媒体に帰属します。掲載媒体に著作権があるということは、広告掲載を依頼した会社が同じであっても、異なる媒体で同じ内容の広告をそのまま掲載すると著作権侵害にあたる可能性があるのです。

「自社で出稿した求人広告だから、他の媒体で使ってもいいだろう」と安易に使用すると著作権の侵害になる可能性があり、その結果として著作権法に違反する恐れがあります。

広告作成と素材の著作権

広告作成と素材の著作権
  • キャッチコピーの場合
  • 写真・画像・動画の場合
  • デザインの場合

広告を作成するうえで写真や画像、イラストといった複数の素材を扱うことが多く、それぞれに対して著作権で注意すべきポイントは若干異なります。ここでは、広告の作成時に注意すべき素材ごとの著作権について、「キャッチコピー」「写真・画像・動画」「デザイン」の3要素に分けてみていきましょう。

キャッチコピーの場合

キャッチコピーの著作権について重要なポイントは、文章における「創作性の有無」です。文面がどれだけ似ていても、創作性が認められない限りは、他社が無断使用しても著作権侵害にはあたらないケースが多くなります。

特に、短い文章の場合は著作物とみなされないケースも多く、線引きが難しいのも事実です。キャッチコピーのような短い言葉は世間にありふれており、日常的に使用される短い言葉の羅列では、創作性が認められず著作物としては扱われない場合が多いでしょう。

写真・画像・動画の場合

写真・画像・動画の場合は、素材の作成者もしくは撮影者に著作権が帰属します。フリー素材であっても「商用利用不可」や「アダルト不可」といった条件付きの場合もあるため注意が必要です。

なお、人物には肖像権、商品には意匠権・商標権などがあるので、著作権とは別に違反するケースも存在します。例えば社員の写真の場合、撮影者が他社であれば自社にその写真を自由勝手に使える権利はなく、写っている社員本人の許可なく写真を使用することもできません。

また、著作権が切れていない古い映画のポスターをデザインの雰囲気を演出するために登場させる場合などは、著作権違反になる可能性があります。さらに、自社が依頼して写真家が撮影した写真であっても、異なる目的で撮影者に断りなく使用すると著作権侵害にあたるので注意しましょう。

デザインの場合

イラストやロゴマークなどのデザインの著作権は、基本的に制作者に帰属します。ロゴデザインの制作などを外部に依頼した場合は、著作権を譲り受けない限りは、納品を受けた依頼者であっても自由に使えません。契約書にしっかりと使用に関する取り決めを記載して、著作権譲渡を行う必要があります。

ただし、文字のみのシンプルなロゴは著作権そのものが認められない場合もあります。とはいえ、デザインが既存のものと酷似していると、最終的に法的には著作権侵害と認められなくても、訴えられてしまうことがあるので注意しましょう。

広告の著作権と「引用」の関係

広告の著作権を理解するうえで「引用」との関係性について理解する必要があります。ここでは、著作権法における「引用」のルールや広告のキャッチコピーを引用したい場合の方法について詳しく解説します。

著作権法における「引用」のルール

「引用」とは、他人が作った著作物を、自分のコンテンツに取り入れることを指します。引用は文章のみならず、画像や動画についても可能です。

著作物の無断利用は原則として違法になりますが「報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で」あれば「出典」を記載することで引用できます。

「引用」が認められる理由は、何らかの主張や批判、自由な言論のためには他人の著作物を用いる必要が多々あり、過剰な利用制限は返って問題となるからです。「引用」が認められるには、次の5つの条件を満たす必要があります。

  1. 主従関係が明確(明確性)
  2. 引用部分が他の部分の明確な区別(明瞭区別性)
  3. 引用の必要性がある(必要性)
  4. 出典元の明記(出典)
  5. 改変しないこと

これらの全条件を満たすことで「引用」は成立します。ただし、他者の著作物を複製して、もともと公開されていたものとは別の場所に公開する「転載」と「引用」は別物なので注意しましょう。

参考:著作権の引用とは?画像や文章を転載する際の5つの条件・ルールを解説 | TOPCOURT LAW FIRM

広告のキャッチコピーを引用したい場合

広告のキャッチコピーを引用して文章を作成する場合は、その文章が広告に結びつくものかどうかで引用すべきかを判断します。「文章の多くをコピーしている」「独自性もそのまま」といった場合は、著作権侵害になる可能性があります。

また、出版社に属する記者やWEBライターなどは「リライト」についても、著作権の侵害をチェックする必要があります。リライトとは、他者の著作物の文章を自分の知見などをもとに書き直すことです。

リライト自体は法律的に何ら問題ありません。ただし、文章をまるごとコピーし、独特性を加えないまま表現すれば、著作権法の問題となるでしょう。元となる文章と明らかに似た表現とならないよう、注意が必要です。

広告の著作権侵害

広告の著作権侵害について理解するには、過去の判例や事例を参考にするとわかりやすいでしょう。ここでは3つの例を上げ、その内容から著作権の判断基準として参考にしてみてください。

キャッチフレーズは著作権が認められないことも

教材に使用したキャッチフレーズが似たフレーズを使用していたとして、ある事業者が訴えを起こしたという事件がありました。裁判所はキャッチフレーズのような広告における文章の著作物性の判断を「他の表現の選択肢があまり多くなく、個性を表現する余地が小さい場合は、創作性が否定される場合があるというべき」として、フレーズの個性、創作性を認めませんでした。その結果として、裁判は第一審、控訴審ともに原告の敗訴となったのです。

参考:英会話教材の宣伝広告用DVDの内容に関する著作権侵害を認めた「スピードラーニング」第2事件東京地裁判決について – イノベンティア
参考:有名なキャッチコピー・キャッチフレーズには「著作権」がないから、勝手に使っていいの? | 『クリエイターのための権利の本』(全6回) | Web担当者Forum

類似性が認められず著作権侵害にならない例

キャッチフレーズが著作物として認められた場合でも、原告と被告のキャッチフレーズでの類似性が認められず、著作権侵害にならないといった例もあります。

キャッチコピーが類似しているとして起きたとある裁判では、原告のキャッチフレーズについて「5・7・5調で書かれていること」「対句的な表現に創作性があること」などの理由から著作物性は認められましたが、被告側のキャッチコピーとの類似性は認めず、著作権侵害として認められていません。

標語のような短い文章でも著作物として認められることがあるという事例である一方、類似と認められる範囲は非常に狭いということも同時に判示されています。

参考:有名なキャッチコピー・キャッチフレーズには「著作権」がないから、勝手に使っていいの? | 『クリエイターのための権利の本』(全6回) | Web担当者Forum
参考:平成13年 (ワ) 2176号 損害賠償請求事件|著作権判例データベース

広告文の酷似による著作権侵害が認められた例

求人広告における文章について、掲載した文章が似ているとして著作権侵害を問う裁判が行われ、著作権侵害が認められた判例があります。この裁判での争点は「原告側が作成した転職に関する広告文は著作物にあたるかどうか」です。

裁判では原告作成の転職に関する広告文について著作物性を認められ、被告は罰金の支払を命じられました。実際の広告文では「かなと漢字の相違」「文末の表現方法」程度しか異なっておらず、これを前提として,著作権侵害が認められたようです。

参考:「就職情報」著作物事件 – インターネット判例要約集ー附・日本著作権法の概要と最近の判例|2003年 – 大家重夫の世情考察
参考:知的所有権判例ニュース2004-1

まとめ

広告に使われる写真やデザイン、イラストなどの素材の多くは、著作権が認められる場合が一般的です。よって、会社で扱う広告は著作権を侵害していないかとチェックできるような仕組みやフローを取り入れなければ、気づかないうちに著作権侵害となっている可能性もあります。

さらに制作に関わる部分を外注した場合は、デザインにおける著作権は外注先にあることを理解しておきましょう。さまざまなコンテンツで展開する予定がある場合は、著作権を譲渡する契約を事前に結ぶ必要があります。

今回ご紹介した著作権に関する基礎知識や著作権に関する過去の判例や事例を参考に、著作権に関するトラブルを回避するためにも、社内でのルールや取り組み方を改めて確認してみるのがよいかもしれません。

記事のURLとタイトルをコピーする