自店の売上アップをめざすには、顧客が入りやすく、自然に滞在時間が長くなるような店舗レイアウトであることが重要です。では、具体的にどのようなポイントを意識して店舗レイアウトを考えればよいのでしょうか。

今回は、顧客の購買意欲を促し、長く滞在したくなるような店舗レイアウトや、接客において店舗側のメリットとなるレイアウト、業種別のポイントについて紹介していきます。

店舗レイアウトを決めるには顧客心理を分析する

売上アップを目指して店舗レイアウトを決める際には、来店する顧客の目線に立って考えることが重要となります。その際に取り入れたいのが「AIDMA(アイドマ)の法則」という心理モデルです。

AIDMA(アイドマ)の法則とは、「Attention(注意)」「Interest(興味・関心)」「Desire(欲求)」「Memory(記憶)」「Action(行動)」というそれぞれの単語の頭文字を取ったもので、顧客が商品やサービスの認知して購買行動に移るまでの心理的なプロセスをあらわしています。順を追って説明します。

「Attention(注意)」は、顧客が商品・サービスの存在を認知する段階です。テレビや実店舗、口コミなどでその存在を知ることになります。

「Interest(興味・関心)」は、顧客がその商品・サービスについて関心を持ち始めた状態です。CMやSNSなどを目にしたことで興味を抱いている段階です。

「Desire(欲求)」は、顧客が興味・関心をもった商品・サービスをもっと知りたい、欲しいという欲求が起こる段階を指します。

「Memory(記憶)」は、顧客が商品・サービスを記憶にとどめている状態です。顧客が商品を欲しいと思ったとしても、必ずしもすぐに購入に至るわけではありません。商品の存在を知っていても来店する機会を失っていたり、サービスに関心があっても時間がなく問合せするタイミングを逃してしまったりということも考えられます。その場合に顧客に忘れ去られることのないように、さまざまな媒体などを使って商品・サービスの存在を記憶にとどめてもらいます。

「Action(行動)」では、いよいよ顧客が商品・サービスを購入する段階に入ります。その段階においても顧客は本当に購入すべきかを迷うことも考えられます。その不安を取り除くためには、例えば実店舗に足を運ぶ手間をはぶけるようにオンラインショップでの販売も行ったり、購入するタイミングを促す目的で期間限定特典をつけたりする工夫も大切です。

店舗レイアウトを決める4つのポイント

顧客が気軽に訪れやすく、売上アップにもつながるような店舗レイアウトにするにはどのような工夫が必要なのでしょうか。ここでは店舗レイアウトを決める4つのポイントについて紹介します。

店舗レイアウトを決める4つのポイント
  • お客様が入りやすい開放的な入口にする
  • 目を引くポイントを作り滞在時間を長くする
  • 売れる場所に合う商品陳列で購買意欲をそそる
  • 小さい店舗ならコンセプト作りをしっかり行う

お客様が入りやすい開放的な入口にする

顧客にとって入りやすいお店であると感じてもらうには、開放感は重要なポイントとなります。入り口が狭く、店内を見渡すことのできないような入口では、顧客側もなんとなく入りづらいという印象になり、入店をためらってしまう可能性があります。

また、入口に足を踏み入れたすぐ正面にレジカウンターを設置してしまうと、顧客側にとっては「見られている」という印象になり、不快感を感じてしまうこともあります。店舗の入り口は開放的にして、気軽に入りやすいレイアウトを考えましょう。

ただし、高級ブランドなど店舗の高級感やイメージを大切にする店舗については、あえて顧客が入りにくいと感じる入口にしている場合もあります。

目を引くポイントを作り滞在時間を長くする

顧客の滞在時間が長くなるような動線であるかどうかも重要なポイントです。どんなに数多くの顧客が来店したとしても、短い滞在時間で商品を購入することなく帰ってしまったのでは、売上には結びつきません。顧客に長く滞在してもらい、商品・サービスを購入してもらえる動線づくりを考えましょう。

一般的な考えとして、小売店などでは動線が長いほど、顧客の購入点数が増えると考えられています。人気商品だけを陳列するような注目ポイントを売り場に作り、自然に顧客が店内全体をまわれるようなレイアウトも工夫してみましょう。

売れる場所に合う商品陳列で購買意欲をそそる

店内において、「商品がよく売れる場所」が存在します。一般的には、入口付近、レジ付近、店舗の一番奥の3カ所といわれており、適切な配置をすることで、購買意欲を促す効果も期待できます。

入り口付近 入口から入ってすぐに目を引きやすい ・セール商品
・キャンペーン商品
レジ付近 会計待ちの「ついで買い」が見込める ・低価格帯の商品
お店の一番奥 お客様の歩調がゆっくりになる場所なので、時間をかけてアピールできる ・店のイチオシ商品

入口付近は目がつきやすいため、セール商品やキャンペーン商品の配置がむいており、レジ付近は会計待ちの顧客がついでに購入できるように低価格帯の商品が向いているとされています。また、店舗の一番奥は、顧客の歩調が遅くなる場所とされることから時間をかけてアピールできるイチオシ商品を設置してみるとよいでしょう。

小さい店舗ならコンセプト作りをしっかり行う

自店が小さい店舗である場合には特に、明確なコンセプト作りを行いましょう。「コンセプト」とはテーマや方向性を意味し、店舗のコンセプトを具体的に決めておくことで、レイアウトを検討しやすくなります。

コンセプトとレイアウトを考える際には、問いかけを行ってみましょう。たとえば、「子連れでもゆっくり買い物ができるお店」というコンセプトについて”なぜ“と問いかけた場合、顧客は「ベビーカー連れでもゆったりとした空間で買い物がしたい」と考えていることが想像できるでしょう。そこから、広々とした内装にしようというレイアウトが考えられるかもしれません。このように、コンセプトに”なぜ”を問いかけることでより具体的なレイアウトを考えられます。

動線とレイアウトの関わり

ここまで、動線やレイアウトの必要性を説明してきましたが、その二つにはどのような関係性があるのでしょうか。ここでは、動線とレイアウトの関わりについて紹介します。

動線とレイアウトは売上に関係する

動線とは、顧客が店舗内を歩いた軌跡を線で再現したものであり、売上にも影響があります。例えばアパレルショップで考えた場合、店頭だけでなく店舗の奥まで、顧客が入りにくいと感じないようなレイアウト作りをすることで、顧客の滞在時間だけでなく商品を手に取る時間も長くなります。滞在時間が延びて見てもらえる商品が増えるほど、より購入へと結びつく可能性や、1回あたりの購入数が増えることが期待できます。

お客様だけでなく従業員の動線も考える

店舗レイアウトを考える際には、顧客の動線だけでなく、従業員の動線を考えることも重要です。店舗内の広さにかかわらず、顧客と従業員がぶつかることのないように、お客様が商品を眺めやすく、従業員も陳列やレジまで移動する際の作業効率があがるように、双方の動線を意識しましょう。そうすることで、顧客の回転率があがるだけでなく、従業員の作業効率向上にもつながります。

【業種別】売上につながりやすいレイアウト例

ここまで、店舗レイアウトや導線がどのように顧客の購買行動や売上に影響するかについて説明してきましたが、業種別で考えた際にも何か違いはあるのでしょうか。最後に売上につながりやすいレイアウト例を業種別に紹介します。

【業種別】売上につながりやすいレイアウト例
  • レイアウト例1:飲食店
  • レイアウト例2:アパレル
  • レイアウト例3:物販店・小売店
  • レイアウト例4:百貨店・大型店舗
  • レイアウト例5:スーパーマーケット

レイアウト例1:飲食店

飲食店では、冒頭で紹介したAIDMAの法則にもあるように、顧客の注意を引き、「食べてみたい」という興味・関心を持ってもらうことが重要です。そこで、店頭にサンプルケースを設置して顧客に興味を持ってもらいます。客席については、速やかな料理の提供と後片づけができるように、客席は奥まで目が配れるようなレイアウトにします。さらに、顧客からの要望があった場合にも素早く客席まで行けるように動きやすさを重視したレイアウトもポイントです。

一方、高級店では気軽に入れるお店ではないという線引きをするためにあえてサンプルケースなどは設置せず、客席につくまで顧客の想像力を盛り上げるようなレイアウトなども向いています。

レイアウト例2:アパレル

アパレルショップでは、顧客が探していた商品や、それ以外の商品も手に取ってもらえることが購入点数の増加へと繋がり、購買単価が上昇します。ショーウィンドウには季節のおすすめアイテムやイチオシ商品を設置し、入口には顧客が入りやすいような買い求めやすい商品を配置します。

フィッティングルームの近くにはスーツやワンピースといった商品を配置して、すぐに試着に持って行きやすいレイアウトにすることもポイントです。

また、アパレルショップではレジが店内の一番奥にあるケースがよく見受けられますが、これは、顧客が購入を決めた商品以外にも目を通してもらえるように店内を一周できるような動線になっています。

レイアウト例3:物販店・小売店

雑貨を扱う物販店や小売店は、さまざまな種類の商品が置かれているため、顧客が来店してすぐに見やすい配置であることがポイントです。迷路のような動線では顧客は回遊しにくいため、求めている商品の場所にすぐに行けるようなレイアウトにしたり、さらに目につきやすいように天井から商品ジャンルを書いたポップを吊り下げたりするなどで、顧客が回遊しやすい動線を心がけるとよいでしょう。

レイアウト例4:百貨店・大型店舗

百貨店などの大型店舗の場合では、ショーウィンドウには商品を陳列するのではなく、店舗イメージを視覚的に訴求することで顧客の購買意欲をかきたてるマーケティング方法の「ビジュアルマーチャンダイジング(VMD)」が採用されています。また、店内では回遊性を重視したレイアウトを採用しつつも、大型店では避難動線を重視したレイアウトが行われています。

ビジュアルマーチャンダイジングをはじめ、店舗のレイアウトやディスプレイによる戦略について詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。

小売店におけるMD(マーチャンダイジング)とは?わかりやすく解説

レイアウト例5:スーパーマーケット

スーパーマーケットは年配から子どもまでさまざまな年代の顧客が来店するため、各商品のターゲット層が手に取りやすく、目線に入りやすい高さに陳列するなど、誰でも利用しやすい総合的なレイアウトが求められます。

また、人は入店して一番目に入ったものを購入しやすいという傾向をとらえ、野菜や果物などの旬が変わる食材は入口からもっとも近く配置するなどの手法もあります。

スーパーマーケットのレイアウトでは、商品を選びやすくするため一方向で済むような動線を採用し、利便性を重視することが大切です。

まとめ

今回は、店舗レイアウトを決めるための4つのポイントを紹介しました。顧客が入りやすいような開放的な入口にし、滞在時間が長くなるような動線にすること。また、購買意欲をそそるような陳列方法もポイントです。

レイアウトしやすいように自店の方向性を示すコンセプトを明確にして、顧客の目線に立ったレイアウト作りを目指してみてはいかがでしょうか。

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