店舗を訪れるお客様にとって、心地よく快適に店内で過ごせるかどうかは接客マナーの良し悪しも大きく影響する要素の1つです。店舗の好印象につながるような接客を行うためにはどのようなことに気をつけたらよいのでしょうか。今回は、接客マナーについての基本と、接客スキルを向上させるためのポイントについて紹介します。

接客マナーとは?

お客様と接する仕事である接客業において、接客マナーを身につけることは基本中の基本ともいえる要素であり、接客マナーの良し悪しがお客様の印象や今後の関係性を左右するほど重要となります。ここでは、接客マナーについての基礎を紹介します。

接客マナーが重要な理由

接客とは、従業員とお客様という関係性があって成り立ちます。常連客や知人などすでに顔なじみの関係でもない限り、ほとんどの場合は従業員とお客様がお互いに初対面の間柄です。そのため、従業員の印象が悪ければ、例えその他の要素が評価に値するとしても、お客様は次回以降来店をしないということも考えられます。

株式会社ユニシア・コミュニケーションズが2017年に実施したインターネット調査においても、「味が美味しい人気店だけど接客が悪いお店について、どう思うか?」という設問に対して、回答数374人のうちの82.4%の人が「そのお店には行きたくない」と回答しています。

この結果からわかるように、接客マナーの良し悪しは料理の味や商品の良し悪しよりもお客様の気持ちを左右し、お客様との良好な関係性を保つために欠かせないポイントだといえるでしょう。

参考:飲食店の接客マニュアルに絶対載せるべき14の基本、接客マナー&言葉使い | 株式会社ユニシア・コミュニケーションズ

接客マナーと接遇との違い

接客と似た言葉に「接遇」という言葉があります。接客とは、お客様にふさわしい商品・サービスをいち早く提供したり、マニュアルに従った正しい対応を行ったりすることというようなスキル面を指しますが、接遇とは、お客様がいかに心地よく快適に過ごせるかを目的としたおもてなしの心で接することがポイントとなります。

例えば子ども連れのお客様が子どもの衣類を探していた場合に、子どもの体型からサイズを予測してお客様が好む商品を提供することが接客であれば、お客様が品定めをしている間に子どもをあやしたりコミュニケーションをとったりすることは接遇といえるでしょう。

いずれかのスキルがあればよいというのではなく、お客様に配慮した接遇的な側面を意識しつつ接客を行うというように、両方を行えるように心得ておくのが良いでしょう。

接客マナーの基本5原則

お客様との良好な関係性を保つための接客マナーとは、主にどのようなことが含まれるのでしょうか。ここでは、接客マナーの基本5原則について紹介します。

接客マナーの基本5原則
  1. 挨拶
  2. 表情
  3. 態度
  4. 身だしなみ
  5. 言葉遣い

原則1:挨拶

挨拶は、接客に限らず、社会に属するうえで欠かせないものです。初対面のお客様と行う初めてのコミュニケーションが挨拶であり、声のトーンや姿勢などによって印象が大きく変わります。

店舗にとっては、お客様がお店に入った時や店舗の前に来た時など、外観などの次にお客様に印象を与える要素となります。自分がどのような挨拶をされたら気持ちがよいかを考えながら、快く迎え入れるように明るい声で挨拶を行いましょう。

原則2:表情

自分が初めての店舗を訪れた際に、従業員に笑顔がなく、不機嫌な様子だったらどう感じるでしょうか。聞きたいことがあっても話しかけにくくなってしまうかもしれません。

接客時には笑顔でいることはとても大切であり、お客様が話しかけやすいような雰囲気作りを心がけるようにしましょう。また、話しかけられたら明るい表情で相手の目をしっかり見て会話することも重要です。

原則3:態度

ここでの態度とは、接客時の姿勢や立ち居振る舞いのことを指します。接客時のしぐさや商品の扱い方、歩き方などは、想像以上にお客様には見られているものです。それらの細かな振る舞いによって、お客様からの印象も大きく変わります。

お客様が購入した商品を手渡す場合や、お客様の前で商品を扱う場合など、細かい動作にも丁寧な態度で接客することを常に意識しましょう。店内で品出しをしている時やレジの処理をしている時など、直接お客様と接していない場合でもお客様から見られていることを意識しましょう。

原則4:身だしなみ

服装の乱れや清潔感の有無といった、相手に不快感を与えないための身だしなみは接客においてもとても重要な要素です。店舗のイメージや制服にあわせたヘアスタイルやメイクを心がけ、清潔感を常に意識しましょう。

服装や髪形などにルールを設けている場合は、自分だけでなく、他のスタッフもルールを守れているか確認し、店舗全体で徹底できるようにしましょう。服装やヘアスタイルの乱れなどは、人となりを判断されることにもつながります。独自のおしゃれに固執せず、従業員としての役割にあった身だしなみは何かを考えることが大切です。

原則5:言葉遣い

接客時の言葉遣いは多くの場合は敬語が必要となります。尊敬語、謙譲語、丁寧語といった敬語の使い分けを理解し、状況に適した言葉選びをマスターしましょう。接客業では、以下の様に主に使用される「接客7大用語」というものがあります。

・いらっしゃいませ
・少々お待ちくださいませ
・大変お待たせいたしました
・ありがとうございました
・かしこまりました
・申し訳ございません
・恐れ入ります

お客様への敬意を表すためにも最低限覚えて、咄嗟の対応でも使えるように身につけておきましょう。

マナー違反な接客をしないために気をつけるポイント


せっかく来店いただいたお客様が不快な思いをするような接客にならないように、気をつけるべきポイントがいくつかあります。ここでは、マナー違反な接客をしないために気をつけるポイントについて4つ紹介します。

清潔感のある身だしなみをする

接客マナーの基本5原則として紹介したように、従業員に清潔感がみられないことは店舗全体の雰囲気の悪さにもつながり、来店したお客様が不快な思いをしてしまいます。制服の乱れや爪の汚れといった清潔感はもちろん、濃い化粧や強い香水の匂いなども場合によってはお客様に悪い印象を与えてしまいます。

自分の好みやこだわりを押し通すのではなく、店舗の従業員である自覚を持って、店舗のコンセプトや雰囲気やイメージにあった身だしなみをするように注意しましょう。特に、飲食店においては衛生面を気にされる場合も多いことや、匂いなど食事を阻害する要素が悪影響をもたらす可能性があるので注意しましょう。

間違いやすい言葉遣いを把握しておく

日常で無意識に使っている言葉のなかには、間違って使っている言葉もあります。

接客時によく聞かれる例として、「〇〇はよろしかったでしょうか」という言い回しがありますが、こちらも文脈によって間違いになるケースがあります。過去のことについて尋ねる場合には「よろしかったでしょうか」で問題ないですが、確認をとる場合などは「よろしいでしょうか」が適切です。

また、レジで現金のやりとりをする場合に「5,000円からお預かりします」という言葉も聞かれますが、この場合は「5,000円をお預かりします」が適切です。このように、普段よく聞く言い回しも間違いである可能性があるので注意しましょう。

なお、言葉遣いが適切であっても、小さい声や早口過ぎるとお客様が聞きとりづらくなります。店舗に対してよい印象を持っていただくためにも、はっきりと大きい声で伝えるようにしましょう。

お客様を立てるコミュニケーションをおこなう

接客時に重要なのは、お客様を大切にすることを意識してコミュニケーションを行うことです。例えば、お客様から質問を受けて接客をしている際に、他の作業をしながらお客様と目をあわせることなく相づちを打っていては、お客様にも悪い印象を与えてしまいます。作業の手を止めて、お客様の目をみながら対応するようにしましょう。

また、お客様が話をしている最中に割って入って話を始めたり、お客様の言葉に対して「でも」などと反論したりすることは避けましょう。特にクレームを受けているときなどは状況をさらに悪化させることにもなりかねません。お客様の言葉を最後まで聞き、お客様を立てるコミュニケーションをとることを心がけましょう。

お客様に常に見られていることを意識する

接客をしていないときでも、お客様は従業員の行動をよく見ているものです。例えば、従業員同士が私語をしたり、お客様がお店を出る前から片付けを始めたりすると、お客様は自分が歓迎されていないのではないかと感じてしまう可能性があります。

また、腰に手を当てたり、腕を組んだりする姿勢は威圧感を与えてしまいます。髪や顔を触るなどの行為も、特に飲食業の場合では不快な印象を与えることもあります。お客様に常に見られていることを意識した立ち居振る舞いを心がけましょう。

接客マナーを向上させるためのコツ

接客マナーを向上させるためのコツ
  • お客様の立場になって考える
  • 接客時はお客様と適切な距離感をとる
  • マニュアルから一歩進んだ接客をする

基本的な接客マナーを身につけたら、今度はさらにお客様に好印象を与えるために、スキルの向上を目指しましょう。最後に、接客マナーを向上させるためのコツを3つ紹介します。

お客様の立場になって考える

冒頭で接客と接遇の違いを説明したように、マニュアル通りの接客を行うだけでは接客マナーは向上しません。来店されたお客様の年齢や性別、状況、誰と来店しているかなどをもとに、常に臨機応変な対応ができるようにしておきましょう。
店内では、お客様がどのような商品を手にとるか、手にとる商品に共通するのはなにか、など、お客様の様子に注目してみることが大切です。そのうえでお客様のニーズに合致するような商品を紹介したり、声がけをしたりすることで、お客様に「自分を気遣ってくれている」と感じてもらい、良好なコミュニケーションにつながります。

接客時はお客様と適切な距離感をとる

店舗を訪れるお客様は、従業員と積極的に会話を楽しみたいお客様や常連のお客様もいれば、極力話しかけられたくないと思うお客様もいます。お客様が入店したらすぐに話しかけるのではなく、ある程度の時間は距離をおいてお客様の様子を見守り、必要と思ったらすぐに対応できるような適切な距離感をとることを心がけましょう。

マニュアルから一歩進んだ接客をする

接客を必要とする店舗においては、マニュアルに基づいた接客をすることが多くなりますが、ときにはマニュアルに頼らない接客が重要となる場合もあります。例えば、雨天時の来店のときには「お足元の悪いなかご来店くださり、ありがとうございます」と声がけをしたり、飲食店の場合には季節や気温に応じたメニューをすすめたりするなど、その場に応じてマニュアルから一歩進んだ接客をすることがポイントです。

基本的には各店舗に設けられたマニュアルに沿った接客を進めながら、お客様の立場になってその場に最適な接客方法は何かを考えながら進めていくとよいでしょう。

まとめ

今回は接客について、基本的なマナーとNGなマナーにならないためのポイントについて紹介しました。

接客の良し悪しは、お客様が快く店舗を利用するためには欠かせない要素です。挨拶はもちろんのこと、態度や身だしなみ、言葉遣いなどに注意をしながら、お客様の立場になって臨機応変な接客でスキル向上を目指してみてはいかがでしょうか。

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