小売店にとって売上アップは重要な目標であり、目標達成するには売り場作りの工夫は欠かせません。顧客が回遊しやすい動線であることや、注目率をあげて購買意欲を高めるようなディスプレイの設置、顧客の目に留まりやすく、商品を手に取りやすい陳列方法など、さまざまな対策を実践し、売上アップを目指しましょう。今回は、売上につながる売り場作りのコツや陳列方法、陳列の際のポイントについて解説します。

売り場作りに使えるマーチャンダイジングとは

「マーチャンダイジング(merchandising)」とは、小売業で用いられる言葉で、日本語では「商品化計画」などと訳されます。商品の時期、場所、数量、価格などを適切に計画的に設定し、顧客に提供するための活動を指します。

マーチャンダイジングは、下記の5つの「適正」がポイントとされています。

  • 適正な商品:市場や顧客のニーズにあっているか
  • 適正な時期:時期的にふさわしい商品であるか
  • 適正な場所:顧客の動線にあっているか、手に取れる場所であるか
  • 適正な数量:顧客の特徴や時期にあった販売数量であるか
  • 適正な価格:商品に見合う、または顧客が求めている価格であるか

売り場作りとは、商品の配置場所や陳列方法だけを重視するのではなく、商品のニーズや時期、価格設定なども考慮することで売上向上につながる見込みがあることに注意しましょう。

マーチャンダイジングについて詳しくは、下記の記事もあわせてお読みください。

小売店におけるMD(マーチャンダイジング)とは?わかりやすく解説

売上に繋げる売り場作りのコツ


配置場所や陳列など物理的な演出の部分で、売上につなげるにはどのような点に注意したらよいのでしょうか。ここでは、売上につなげる売り場作りのコツを5つ紹介します。

商品の配置場所を調整する

売上につなげる売り場作りに重要なポイントのひとつが、顧客にとって商品を見やすく、手に取りやすいような配置場所であることです。陳列棚やラックといった「ゴンドラ」とよばれる什器は、床からの高さによってそれぞれ下記のような名称があり、配置する目的に向き・不向きがあります。また、陳列の高さ以外にも、右利きが多いとされる日本人にあわせて、陳列棚の右側を意識して並べるのもポイントです。

配置場所 特徴
見せ場 床上180cmよりも上にあるエリア。カテゴリを表記したPOPやイメージ写真などでその棚のテーマを訴求する
買い場 床上60〜180cmのエリア。顧客の目が届きやすく、無理なく手を伸ばせる高さ
ゴールデンゾーン 買い場のなかでも、床上85〜150cmのエリア。大人、子どもといったターゲットの下ろした手が無理なく届く範囲で、目に留まりやすい
ストック場 床上60cmよりも低いエリア。顧客が座ったり、しゃがんだりしないと商品を見ることができず、陳列には不向きなことから商品をストックする場とする。陳列する必要がある場合は比較的低価格な商品を配置する

下記の図は、それぞれの配置場所の高さを分かりやすくしたものになります。
ゴールデンゾーン

動線を意識する

売上につながる売り場作りには、動線を意識することが重要です。「顧客が売り場のすみずみまで歩き回れるレイアウト」「顧客がストレスなく歩けるスペースの確保」なども意識しておきましょう。
スムーズな動線は回遊性が高まり、結果的に売上にもつながります。
また、スーパーマーケットなどでカートを用意している場合は、カートがすれ違えるほどの通路であると顧客もストレスなく買い物ができるでしょう。

店舗レイアウトについて詳しくは、下記の記事もあわせてお読みください。

店のレイアウトを決める4つのポイント|業種別の例についてもご紹介

マグネット売り場を活用する

「マグネット売り場」とは、店内のなかでも顧客をマグネットのように強く引きつける売り場のことを指します。店内でマグネット売り場と呼ばれる場所は主に3箇所あります。

設置場所 概要 陳列におすすめの商品
店頭、店の入り口付近 顧客が店舗に入って最初に目につく場所 お買い得商品や季節商品など
通路突き当たり 人は前を向いて歩くことから、一番目につくのは通路正面の突き当たりになる 売れ筋商品や強化商品
レジ周辺 レジに並んで待っているときにレジ周辺の棚に目が届きやすい 小さくて低価格な商品

上記のようなマグネット売り場には、セールのPOPを配置しても売上アップにつながる期待が持てます。

POPを活用する

POP(ピー・オー・ピー、ポップ)とは、「Point Of Purchase(ポイント・オブ・パーチェス)」の略称で購買時点の広告を意味し、顧客に商品の価値を訴求し、購買意欲を高めるための店内宣伝物を指します。例えば「このカートの商品半額」「お買い得品」などとPOPが貼られたカートを見ると、買うつもりがなかった顧客がつい手にとってしまうこともあるでしょう。また、「体幹や足など部位ごとに筋肉量をチェックできる!筋トレに大活躍!」と書かれた体重計があると、購入を機に筋トレに励もうなどと思い浮かぶかもしれません。顧客の注目率を高めるコピーとともに、書体や色使いでインパクトのあるPOPを作ってみましょう。

売上アップにつながるPOPの作り方について詳しくは、下記の記事もあわせてお読みください。

POPの作り方|売上アップに効果的なPOP作りのポイントも解説

商品の陳列を定期的に見直す

どんなにおしゃれで見栄えのよい陳列をしていても、長い間陳列が変わらないままでは、顧客も飽きてしまい、その結果、売上低下につながってしまいます。商品の陳列は定期的に見直し、特に目につく入り口周辺などは、季節にあわせて関連商品を陳列するなどで顧客に季節感をアピールしましょう。また、入学式、運動会など学校や地域イベントにあわせて陳列するのも顧客の目に留まる期待が持てます。

目に留まる売り場作りを助ける5つの陳列方法

顧客の目に留まる売り場作りは、顧客の購買意欲や売上向上にもつながることが見込めます。どのような陳列方法が効果を期待できるのか、目に留まる売り場作りを助ける陳列方法を5つ紹介します。

目に留まる売り場作りを助ける5つの陳列方法
  1. 縦陳列
  2. 横陳列
  3. 島(アイランド)陳列
  4. エンド陳列
  5. 投げ込み(ジャンブル)陳列

陳列方法1:縦陳列

縦陳列

縦陳列とは、同じカテゴリーの商品を陳列棚の縦方向に陳列していく方法です。買い物中の顧客の目線は基本的には横に流れるため、目線を横に動かすと別のカテゴリーの商品があり、縦に動かすと同じカテゴリーの商品があるということがひと目で把握しやすくなります。例えばコーヒー売り場の場合、レギュラーコーヒー、ドリッピパックコーヒー、インスタントコーヒー、ノンカフェインコーヒーといったように棚を縦に区切って陳列されています。それは、横に目線を動かすと違うカテゴリーのコーヒーが並んでいると把握しやすくなる方法を利用しています。

陳列方法2:横陳列

横陳列

横陳列とは、同じカテゴリーの商品を横方向に陳列していく方法です。売りたい商品など特定のカテゴリーの商品を大量に陳列したい場合に用いられます。たくさんの商品を陳列することで顧客の目線が集まることが見込めるというメリットがありますが、下段の商品は見落としがちになるというデメリットもあります。そのため、縦の関連性を意識した陳列によって、横に動く顧客の目線を止めやすくなります。

先のコーヒー売り場でいえば、レギュラーコーヒーの縦陳列のうち、上の段には価格帯の高めの商品を並べ、下段へ進むうちにリーズナブルな価格帯の商品を順に並べていくことで、目線を上から下へ流れるようになります。

陳列方法3:島(アイランド)陳列

島陳列

島陳列(アイランド陳列)とは、通路の中央に台を設置したり、段ボールを積み重ねたりするなどで、島のような形で商品を陳列する方法です。通常の陳列棚とは離れた場所にあるため目立ちやすいことから、季節商品や目玉商品などの陳列に向いています。ただし、通路が狭くなり顧客が回遊しにくくなることもあるため、通行の妨げにならないような広い場所で陳列し、島陳列を増やしすぎない注意が必要です。

陳列方法4:エンド陳列

エンド陳列

エンド陳列とは、長い商品棚の最後の両端に陳列する方法です。エンド陳列はメインとなる通路側に作られるため顧客の目に触れやすく、定番の陳列棚よりも売上に結びつきやすいとされています。そのため、新発売の商品や売れ筋商品など、販売を強化したい商品の陳列に向いています。一方で目につきやすいことから陳列が雑になっていると印象が悪くなるため、陳列の方法を事前に準備しておき、こまめに商品を補充するなどで、きちんと整った陳列をキープすることが重要です。

陳列方法5:投げ込み(ジャンブル)陳列

投げ込み陳列

ジャンブル(Jumble)とは、寄せ集め、混在といった意味を持ちます。投げ込み陳列、ジャンブル陳列とは文字通り、カゴやワゴンなどの什器に投げ込んでいるように無造作に陳列する方法です。スーパーマーケットのレジ前などの通路に特売品のお菓子やカップラーメンなどが陳列されているのを見たことがあるかもしれません。あえて無造作に陳列することで特売感を演出し、顧客が気軽に手に取りやすい印象を与えます。店舗側としてもきれいに並べ直す手間が省けます。ただし、投げ込み陳列は無造作であることから商品に傷がつきやすく、高価格帯の商品には不向きであり、什器内の商品が品薄になると見た目が悪く販売数にも影響するため、定期的に補充する必要があります。

陳列で意識したいポイント

さまざまな陳列方法があることを理解したうえで、自店での商品陳列に活かすにはどのようなことに注意する必要があるのでしょうか。最後に、陳列で意識したいポイントについて4つを解説します。

陳列で意識したいポイント
  • 販売したい商品の陳列面を広げる
  • 販売したい商品を中央に陳列する
  • 前出しを行う
  • フェイシングを行う

販売したい商品の陳列面を広げる

販売したい商品の売上をアップさせるためには、まずは商品が顧客の目に留まる割合である視認率をあげ、商品を手にとってもらうことが重要です。そのためには販売したい商品の陳列面を広げることがポイントとなります。また、通常の商品カテゴリの棚以外に、先に紹介した島陳列やエンド陳列などもあわせて行う「ダブル出し」の方法も売上アップを期待できます。

販売したい商品を中央に陳列する

複数の商品を陳列棚に並べた場合、顧客は陳列棚の中央に最初に目線を置くことが多く、次に正面からみて右側、最後に正面からみて左側の順番で視認する割合が高いとされています。そのため、販売したい商品がある場合は中央に陳列し、その他の商品を優先度にあわせて左右に陳列することで、売上を最大限に伸ばすことが見込めます。

前出しを行う

陳列棚に並んでいる商品を顧客は手前から手にとっていきます。そのため、売れ行きのよい商品の場合、奥まったところに商品が残ってしまい、顧客の目に留まりにくくなってしまいます。手前が空になってしまいがちな商品は奥から手前に商品を出す「前出し」をこまめに行い、在庫がある場合は補充を行うことで、顧客の目につかなくなるという事態を防ぐことができます。

フェイシングを行う

フェイシングとは、商品の名前や特徴が書かれた、商品の顔となる部分であるフェイスを陳列棚の最前面にいくつ並べるかを決定することを指します。フェイス数が多いほど顧客の視認率が高まるため、売上アップにつながりやすく、新商品や売り出したい商品の陳列に適しています。例えば、通常2列で陳列している場合に、売り出したい商品は4列にし、先に紹介したゴールデンゾーンを中心に陳列すると、顧客の目に留まりやすく、手にとる確率も高まる見込みがあります。

まとめ

今回は、売上につながる売り場作りや陳列の方法について紹介しました。売り場作りには商品の配置場所や動線を意識することが大切であり、中でも商品陳列は売り出したい商品を顧客の手にとってもらえるかどうかを左右します。陳列方法には顧客の目線を利用した縦陳列、横陳列、販売強化商品を配置する島陳列やエンド陳列など、売り出したい商品の優先度によってさまざまな配置方法があります。陳列棚をうまく活用し、売上アップにつながることが見込める売り場作りを考えてみてはいかがでしょうか。

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