自社が扱う商品やサービス、自社の営業内容を紹介する「カタログ」は、顧客に自社をアピールし、商品の購入やサービスの利用をすすめるための大切なツールです。

では、カタログにはどのような種類があり、実際にカタログを作成するにはどのようなポイントをふまえたらよいのでしょうか。今回は売上につながるカタログの作り方について、カタログの種類や作成に必要な準備をあわせて紹介します。

カタログの種類と特徴

ひとことでカタログといっても用途にあわせて種類があり、特徴もそれぞれ異なります。簡単な特徴は以下の通りです。

  • 営業用カタログ
  • 自社商品やサービスを紹介し、自社イメージを形成することが目的。認知度向上や見込み客の獲得を図る。

  • 業務販売用カタログ
  • 自社商品やサービスの販売促進が目的。小売店が卸売業者に発注するときなど、流通の過程で使用される。

  • 通販カタログ
  • 一般の顧客に対しての販売促進が目的。カタログ上での販売だけでなく、限定クーポンを添付して実店舗への誘導を図るなどの工夫もある。

  • デジタルカタログ
  • カタログをウェブサイト上で公開したもの。ウェブであればいつでも閲覧可能なため紙媒体とは異なる顧客へのアプローチにもつながる。

    カタログの作り方4ポイント

    自社でカタログを作成するにあたり、どのようなことに注意すればよいのでしょうか。ここでは、カタログの作り方として4つのポイントを紹介します。

    カタログの作り方4ポイント
    1. カタログ作成の目的や課題を明確にする
    2. 市場や競合の情報を集める
    3. ターゲットを明確にする
    4. 何を伝えたいのか明確にする

    カタログ作成の目的や課題を明確にする

    はじめに、カタログを作る目的を明確にします。具体的には下記のようなことがあげられます。

    • 業務用なのか、一般顧客向けなのか
    • 目的はなにか(営業ツール、商品・サービスの認知、自社のブランディングなど)
    • 利用方法(店舗配布、イベントや商談での配布、DM、ウェブサイトなど)

    カタログのターゲットとなる相手が業務用か一般顧客向けかというだけでも誌面構成は異なります。目的やコンセプトを明確に決めることで、ブレることなく作業が進めやすくなるでしょう。多種多様な意見を取り入れながら作り手側でも全員の意思統一を図り、方向性がぶれないように定めていくことも重要です。

    また、既にあるカタログをリニューアルするという場合には、現状の課題を話しあって整理していくこともポイントとなります。どの情報をどのように改修するのか、目的に沿ったリニューアルを目指しましょう。

    市場や競合の情報を集める

    顧客が商品・サービスを選択する際、自社と競合のカタログを見たり、カタログ以外の情報も参考にしたりしながら、内容を比較されます。競合のカタログがすでにある場合は、情報量やレイアウトなどが類似することのないように、自社が優位になるような内容づくりを心がけるとよいでしょう。

    また、カタログを作成するにあたってアピールポイントが曖昧では、単なる商品一覧表になってしまいます。競合と比較して自社のアピールポイントや強みを明確にすることも重要です。

    ターゲットを明確にする

    先にも説明したように、大枠のターゲットとしてカタログが業務用なのか、一般顧客向けなのかを決めたあとは、さらに具体的なターゲット設定を行います。

    業務用であれば、業界や職種、主にカタログを利用する人の役職などを定めていきましょう。一方、一般顧客向けであれば、年齢層や性別、職業や趣味嗜好や居住地域などの属性を絞り込み、さらに実在する人物であるかのように細かな顧客イメージを組み立てた「ペルソナ」を設計しましょう。

    ターゲットのイメージが詳細になることで、デザインや原稿内容もより届きやすいものを作成しやすくなります。

    何を伝えたいのか明確にする

    商品選びの際、商品の種類が多いとかえって選びにくくなるのと同様で、カタログにおいても情報量が多すぎると何を伝えたいのかがうまく伝わらず、読み手が何を選べばよいのか判断しにくくなってしまいます。限られたページ数のなかで掲載したい情報の優先順位を決め、本当に伝えたい内容がわかりやすく簡潔であるかを確認しましょう。事前に情報を箇条書きにすると、整理・精査がしやすくなります。

    カタログにも情報を箇条書きで掲載したり、カテゴリー分けをしたりするなどで、読み手が迷うことのないような工夫をすることが大切です。

    カタログを作るための事前準備

    カタログを作るための事前準備
    • カタログに掲載する情報を整理する
    • 仕様や納期を決めておく
    • 見積もりを依頼し、印刷業者の決定する

    初めて自社でカタログを作成するにあたって、費用をおさえたいからといって自社でまかなおうとしたり、安価な手段を探したりしてしまうこともあるかもしれません。しかし、初めて作成する場合には印刷業者を利用するのがおすすめです。

    印刷業者であれば、限られたページ数のなかでのレイアウトや、カタログに最適な紙は何であるかということなど、事前に相談することで疑問が解消することが期待できます。また、専門の印刷機などを使って作成してもらうことになるため、自分で手作りするよりも仕上がりが綺麗になると考えられます。

    ここからは印刷業者へカタログを作成依頼する場合の事前準備について紹介します。

    カタログに掲載する情報を整理する

    カタログのターゲットや目的などを明確にしたあとは、具体的に何を掲載していくかを整理していきましょう。製品紹介であれば、価格以外にもサイズや重量、性能やシリーズ内での違いなど、製品の特徴がわかるような内容を集めます。画像やイラスト、図表があるとより具体的になります。

    印刷業者と打ち合わせをする場合には、それらをリスト化してまとめたうえに、既存のカタログや競合のカタログなどを参考にするなどで誌面のたたき台を用意しておけば、よりスムーズかつ具体的に話を進めていくことができます。

    仕様や納期を決めておく

    カタログに掲載する内容が決まったら、カタログを印刷する際の誌面の仕様を決定します。ページ数や加工の有無などが具体的になれば、だいたいの納期も決めやすくなります。代表的な仕様は下表を参考にしてみてください。

    仕様の項目 よく使われる仕様 特徴
    サイズ A4
    B5
    ・A4やB5のサイズは商品や情報を多く載せるにも十分なサイズ
    ・雑誌などで使われているサイズなので手に取って読みやすい
    ページ数 4の倍数
    8の倍数
    ・冊子にする場合、ページ数を基本的には4の倍数か8の倍数にする必要がある
    ・一般の顧客に配布するような場合は持ち帰りやすさと読みやすさを考えたページ数がおすすめ
    製本方法 中綴じ ・紙を二つ折りにしてページ数分重ね、針で中央を綴じる方法
    ・8ページから綴じられるので、ページ数が多くないカタログ制作と相性がよい
    ・営業販促用や会社案内などに使用
    無線綴じ ・糊によって本文を綴じる方法で長期保存にも向いている
    ・本文のページ数分の厚さで背表紙ができる
    ・100ページ以上など、ページ数が多い場合は、中綴じ製本が難しいので無線綴じが必要になる
    ・総合カタログやギフトカタログなど、商品や情報を多く載せるカタログと相性が良い
    折りカタログ ・1枚の紙を二つ折りや三つ折りにして作る
    ・サイズと折り方により、4面(4ページ)か6面の紙面スペースのため、紹介したい情報が少ない場合や、一部を紹介する場合などに向いている
    ・無線綴じや中綴じカタログのダイジェスト版として組み合わせて使うこともできる
    用紙の種類 コート紙 ・表面がコーティングされ光沢がある用紙で、カラー印刷で一般的に使用されている
    ・写真をきれいに再現できるため、商品写真などのビジュアルが多いカタログに向いている
    マットコート紙 ・表面が滑らかで発色がよく、鮮明な印刷が可能・商品写真だけでなく文章も掲載するカタログに向いている
    印刷方式 オンデマンド印刷 ・数百部程度までの少ない部数で作る場合、オンデマンド印刷が一般的
    ・掲載内容を頻繁に更新するなど、何度も作り替えたりする必要がある場合に向いている
    オフセット印刷 ・専用の版を作成し、その版にインクを乗せて転写する方法で、大量に印刷したい場合に向いている
    色数 フルカラー印刷 ・フルカラー印刷では一般的に、CMYKと呼ばれる4色が使われる。
    ・CMYKはそれぞれC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)
    特色印刷 ・CMYKだけでは再現が難しい色が存在するため、「特色インク」として専用のインクで印刷をする方法
    ・特色には非対応の印刷会社もあるので、特色印刷を利用したい場合は、事前に確認が必要

    見積もりを依頼し、印刷業者の決定する

    カタログの内容や紙の仕様などにより、適切な印刷業者や印刷の費用は異なります。そのため、複数の印刷業者に見積もりを依頼して、内容次第で印刷業者を決定することがおすすめです。金額面はもちろんのこと、こだわりたい部分などの希望をどの程度受け入れてくれるのか、どのくらいの納期がかかるのか、ということもあわせて判断材料とします。

    印刷業者を選ぶ場合には、企業サイトなどで公開されている制作実績を参考にすることがおすすめです。今回作成したいカタログと近い方向性の制作実例があれば判断基準にすることができます。作成したカタログをウェブカタログにしたい場合などにも、同じ業者で対応できるかなどを確認しておきましょう。

    カタログの作成手順

    印刷業者に依頼する場合でも、カタログの作成手順を把握しておくことで、打ち合わせやその後の制作中のやりとりがスムーズになります。最後にカタログの作成手順について紹介します。

    カタログの作成手順
    1. カタログの構成を決定する
    2. カタログのデザインを作成する
    3. カタログのデザインをチェックし、修正する
    4. カタログを印刷する

    カタログの構成を決定する

    カタログは、基本構成として「コンセプトページ」と「商品掲載ページ」とにわかれます。

    コンセプトページとは、自社商品・サービスや自社イメージを伝えるためのページです。第一印象を左右するページとなるため、ひと目で関心をひくようなデザインやキャッチコピーの選定が重要となります。

    商品掲載ページは商品の特徴やスペックなど詳細を掲載するページです。多く載せたいからとページいっぱいに情報を詰め込もうとせず、本当に伝えたいことを整理して、ページに余白を残すような見やすいレイアウトがよいでしょう。目安としては1ページにつき、5〜10点の商品紹介が適しています。

    カタログのデザインを作成する

    次に、表紙や商品紹介などの各ページのデザインの作成です。事前に整理しておいた掲載内容や商品画像・イラストなどを各ページに配置していきます。この段階においても、作成しているデザインが、事前に決定したカタログの目的やコンセプトやターゲットにあっているかをチェックし、改訂やウェブカタログ化などの際に更新しやすいかといった点にも注意していきます。

    カタログのデザインをチェックし、修正する

    全体的なデザインや原稿の配置が完了したら、修正作業(校正)を行います。この際は、顧客目線に立って修正点を探すことがポイントとなります。掲載内容はもちろんのこと、キャッチコピーや書体の種類などがターゲットにふさわしいかどうか、また、ページを開いた際に視線が流れる導線が適切であるかなど、自分がターゲット顧客になったつもりで細かくチェックすることが重要です。

    依頼する印刷会社やデザイン会社によっても異なりますが、修正したい場合には、修正箇所に赤ペンで修正指示を書き込むケースがあります。この修正指示の箇所を「赤字」といいます。その赤字をもとにデザイナーが修正を行うことになるため、校正の際の赤字はわかりやすく記載することが必要です。情報量が多いカタログなどの場合は、この修正作業は「初校、再校、念校」と完全に修正箇所がすべて対応されるまで続けられます。

    カタログを印刷する

    最終的にカタログを印刷する段階では、印刷前に「色校正」といって試験的に印刷を行い、実際の商品と印刷物の色味が異なっていないかなどの、色に対する校正を行います。色校正は、簡易校正や本紙校正、本機校正という種類がありますが、それぞれ費用がかかるため、デザインデータ上で確認している場合や、それほど色味に重要性をもたない場合は省略することもあります。

    ただし、画面上のデザインデータと実際に紙に印刷した場合では発色が異なることもあるため、商品カタログのように、画像の色味が極力正確に伝わることが大切な要素となるようなカタログの場合は、色校正を行うことがおすすめです。色味を確認してOKが出たものは、印刷から製本して完成、納品となります。

    まとめ

    今回は売上につながるカタログの作り方について、カタログの種類や特徴、作成のポイントなどを紹介しました。

    カタログは、商品紹介やブランドイメージなどの掲載する内容だけでなく、業務用か一般顧客用かといった対象や、商談や店置きといった配布場所の違いによって性質は異なります。そのため、何を伝えたいかという目的やターゲット設定を明確にし、競合他社と類似することのないような情報収集なども必要になります。

    紙や製本などの仕様や紙面構成の仕方などを1つ1つ確認しながら、理想のカタログに近づけるように工夫してみてください。

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